一部、性描写が含まれています
苦手な方はお控えください
それは仕事がお盆休みに入り、久々の長期休暇にようやく羽を伸ばせると思った矢先のことだった。
実家からとは知らずに電話を受けたのが運の尽き。
何を言っても逃れられようのない強い調子に負け、最終的には親父の生家に行くことを母親に押し付けられてしまった。
親父の生家、つまりオレの祖父の家には、現在親父の兄夫婦が子供2人と祖父を含めて5人で暮らしている。この親父の実家に帰省するのが、母親にとってはストレスのようで、毎年この時期になると自分の代わりに行けと言ってくるのだ。この2,3年は仕事を理由にすることで断わっていたけれど、今年はウカツにもゆっくり休みたいなどとついつい口を滑らしてしまっていた。
電車に揺られ、オレはため息を吐く。
なんで……どうしてオレが?
そう何度も頭の中で繰り返す。全ては断わり切れなかった自分が悪い。それがわかっていても諦めきれないのは、これから行く場所に後ろめたい過去を思い出してしまうからだ。
長い長いトンネルを抜けると、光が差し込んで真っ白に染まった後、懐かしい景色が目前にぱっと広がる。一瞬胸が押されるような圧迫を感じて、それからもう一度深く息を吐いた。
車掌のアナウンスがスピーカーを通してか細く聞こえ、次の停車駅への到着が近い事を乗客全員に知らしていた。
駅から祖父の家までは歩いて20分ほどかかる。電車を降りてすぐに電話を入れてみたけれど、どうやら留守のようで迎えは期待できそうにない。オレは照りつける太陽を睨み付けると、両手の荷物を抱え直した。
冷房が効いた中での内勤が多い仕事のため、暑さにはめっきり弱くなっているみたいだ。ダラダラと大量の汗が、頭やら首、全身から吹きだすように流れては落ちていく。
辿りつくまでに干からびてしまうんじゃないだろうか。そんな妄想までしてしまう始末で、そうなった方がいっそ楽かもしれないとすら思ってしまう。
「……重い」
荷物も気持ちも、前に進もうとする足すらも重くて、家が近づくごとにすぐにでも引き返したくなってくる。
それでも昔は、祖父の家を訪れるのを楽しみにしている自分がいた。
あれは高校を卒業する年の夏。その頃まで、オレは5歳年の離れた従兄弟のことを実の弟のように思っていた。
お兄ちゃんお兄ちゃんと後ろをついて回るのが可愛くて、誰に頼まれるわけでもなくオレは率先して彼の遊び相手を買って出ていた。
祖父も伯父さん夫婦もその日は留守にしていて、家にいるのはオレと彼の2人きり。
13歳になる従兄弟はさすがに以前のように懐いてはくれないけれど、それでもオレにとっては可愛い存在に変わりなかった。
庭の見える和室の部屋で、彼は昼寝をしていた。
タオルでも掛けてやろうと近づいたとき、彼は寝返りを打って仰向きになった。
その寝顔があまりに無防備で可愛くて、オレの胸はそれまでにない高鳴りを感じた。
その唇が「おにいちゃん」と形どって動く。あどけなくて、純真無垢で。誰にも汚されたくないと思う反面、どうなるのか見てみたいとどす黒い感情が沸き起こる。
その時彼の足の間のものが、薄い布の下でピクンっと撥ねるのが見えた。
自分の知らない間に、どんどん大人へと近づいていく。
ただの好奇心。それだけだと自分に言い聞かせ、オレは彼のズボンの中へ手を滑り込ませた。
自分の手の中で小さな彼が息づいている。扱きあげるたびにビクビクと震え、それは大きさを増した。彼の浅くて速い呼吸に、自分が与えている刺激を感じていることを知る。ズボンを介していては窮屈で、オレは半ば乱暴に彼の下半身を露出させた。
ひぅっと息を飲む声がして、恥ずかしいのか足を閉じようと内股に力を入れて隠そうとする。それを無理矢理両手で開かせると、目の前には天を仰ぐ彼の欲望が晒された。
興味半分で見たAVを思い出し、あの時見た女がやっていたように口に含む。苦みと汗とそれから、従兄弟の香りがして。オレは夢中でそれを頬張った。
舌で茎の部分を唇で締め上げ、括れたところへ舌を這わす。気持ちいいのか彼の腰は揺れていて、それすらオレの興奮に火をつけた。
鈴口からは透明な液が溢れ出て、逃げようとするかのように彼の背中が反り返る。どうやら最後の時が近いらしく、彼は絞り出すような高い声をあげると、たっぷりと精を解き放った。トクントクンとオレの口の中で、性器として目覚めた彼が震えている。不思議なことに吐露されたものを飲み込むのは、オレにとっては全く苦痛じゃなかった。
キレイに舐めとって服を戻してやる。けれどショックそうな顔をした従兄弟を見ているのが辛くなって、オレはその日のうちに逃げるように誰にも告げず実家に帰った。
もう彼を弟のように見ることなんてできない。それに気づいた時、オレはもうあの家には行くまいと心に決めたのだった。
祖父の家の前の坂道を上る。これを上りきったところに玄関がある。最後の力を振り絞り、ようやくたどり着くと玄関のチャイムを押す。
昔と変わらない佇まいにホッとするのと、自分だけが変わってしまったようで複雑な思いがした。
しばらく待ってみるけれど何の音沙汰もない。ここに来るのは久しぶりだけど、別に他人って訳でもないからいいだろう。
汗だくで疲れた体を早く休めたくて、早々に自己判断すると中に入ることにした。
「ごめんくださーい、誰かいませんかー?」
声を掛けながら靴を脱ぐけれど、帰ってくる声の1つもない。
昨日のうちにオレがここへ来ることは知らされているはずなのに、そろいもそろって玄関に鍵もせず留守にするとはなんと不用心なのだろう。
自分が今住んでいる都心部じゃ、空き巣に入られても文句も言えない。
ずかずかと中に入り込むと、ひとまず居間へと足を進めた。
キレイに片付いた部屋を一通り眺めると、別の部屋へと移動する。最後に従兄弟の部屋へと入ると、やはりそこにも姿はなくて、ホッと胸を撫で下ろした。
彼も今は高校3年。今年が大学入試だって話だ。結構頭はいい方らしく、高校だって県内のトップクラスに進学したと、いちいち母親はオレに伝えてくる。しかも小さい頃はあんなに仲が良かったのにと、何も知らないくせにチクチクとオレの後ろめたい気持ちを刺激してくるのだ。
勉強机の上には学校で使っている教科書のほかに参考書などか積まれている。どうやら噂通り、勉強は欠かさずしているようだ。あの小さかった彼が、そんなガリ勉になっているなんて想像もつかないけれど、やっぱり黒髪に眼鏡なんてかけたりしているのだろうか……?
成長した彼をイメージしてみるけれど、オレの記憶はやはり13歳の彼で止まったままだ。
部屋の片隅に置かれたパイプベッドに腰を掛ける。
このベッドで彼は毎日寝ているのか……。もしかするとこの部屋に、彼女を連れ込んだりもしているのだろうか?
そう思うと胸がズキリと疼く。
あの日以来、オレの欲望の対象は1人しかいない。叶うはずのない相手だからと諦めようとしたことも何度もあった。それでも別の誰かと付き合うたび、原点に立ち戻る。
オレは従兄弟のことが。あの小さくて可愛い弟のように思っていた彼のことを、今では1人の男として、あさましく恋愛の対象にみていた。
Rシーン多めの(多分)短めのお話を更新します
少しの間ですが、お付き合いください
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