真実からの蜜月~誤解から生まれた真実の続編

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真実からの蜜月 1

ベッドが小さな軋み音をあげて少し沈み込んだ。それと共に、ついさっきまで感じていた温もりが離れて行く。しばらく様子を見ているのが窺えて寝ているふりを続けた。衣擦れと去って行く足音が聞こえた後、しばらくして冷蔵庫が開閉する音がした。

 そう言えば……、と思い出す。
 最近こんな感じで光稀が夜中に起きることが多くなった気がする。たまにではあるけど、寝不足なのかと感じる時もある。また変な事で悩んでいなければ良いんだが…、前例もあるのでそれはなんとも言えない。

 そう、俺がずっと付き合っていると思っていた年上の彼、沢良宜 光稀(さわらぎ みつき)はその3ヶ月という期間俺の事をただの遊び相手くらいにしか思っていなかった。しかも別れる別れないの話になってようやく誤解は解消。あの日の夜は忘れる事のできない記憶で一杯だ。思い出すだけで頬の筋肉が緩むのを感じる。

 それにしても戻ってくるのが遅い。どうしたのだろう。

 ベッドを抜け出し、光稀の元へ向かう。そこには少し大きめの俺のシャツを羽織っただけの彼が、グラスを片手に立っていた。
 わずかに入ってくる光に照らされて物憂げな顔の彼が見える。その姿が悩ましくて心がざわつく。

「光稀?」

 声をかけるとそんな表情はすぐに消えてしまう。何かに悩んでいるのは確実だったが、それに気づかないふりをした。

「ごめん、起こしちゃったね」

 困ったような顔をして俺を見ると少し笑った。そんな気丈さを壊してやりたいような、残酷な気持ちが沸き起こる。

「俺を誘ってるのか?」

「え?あ、まさっ……と」

 一瞬、光稀の身体が後ろに引く。それも計算のうちで抱き締めた。付き合うようになってわかってきたことがある。この人は素直じゃない。唯一、抱かれている時を除いて。

「将人、苦しい」

 俺に比べると華奢な体格で僅かに身長も低い光稀が、腕の中で足掻く。そんな小さい抵抗もまた心地よくて可愛いと感じる。こちらを上目遣いで見ているのを顎に手を添えて口づける。柔らかい唇を存分に楽しみながら、その滑らかな肌に手を這わせた。
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真実からの蜜月 2 R18

 ピクンと身体が震えるのが手を通して伝わってくる。いたずらに這わせた手を露わの双丘に伸ばすと息を呑むような声にならない音がした。イヤイヤをするように身を捩るのを阻止して、指で入り口をなぞり少しだけ入れる。わずかな抵抗はあるが、ソコは指を半分だけ受け入れた。

「光稀のナカ、どうなってるかわかる?」

 ゆっくり指を動かしながらワザと耳元に囁く。硬くした身体が震え、首を横に振るのを横目に、構わず指の根元まで突き刺した。

「なっ……ぁっ」

 侵入してこようとする指を制止しようと伸ばされた指に力が入り、俺の腕に爪がたてられる。その痛みと小さな悲鳴が俺を誘う。

「すごい熱くて締め付けられ……」

「言うなっ」

 俺の言葉に被して打ち消すように光稀が叫ぶ。

「やめっ……まさ……とっ」

 そんな非難の声も聞かず、執拗に弄られたその場所に指を増やしてやると、少しずつ光稀の息が妖しくなってくる。身体の奥深くから流れ落ちてきた残滓が指に絡みつき濡れた音を立てた。まるで吸い付くような光稀の中から指を引き抜くと、向き合いすがりつくように立っていた体を反転させ、受け入れる体勢をとらせて背後から一気に貫いた。衝撃に光稀の背中が反り返る。堪えようとする声が突き上げるたび唇から漏れ出る。

 幾度となく抱いた身体は、隅々まで知り尽くしていて、だけどその度に溺れてしまう。まるで常習性の高いクスリのようだ。

「みつき……俺のだけで……イッて」

「っ……やだっ……!」

 シンクで身体を支えながら、熱っぽい声で光稀が拒否する。
 やっぱり、素直じゃない。もう限界のくせに、強がるのをみて思う。崩れ落ちそうな身体を両腕で支え、深くまで繋がる。最奥に自身の欲望を叩きつけると、小さな押し殺す様な声と後口の収縮が起こり、ポタポタと足の間を白濁した液が零れ落ちた。
 性急な快楽は、光稀の体力を確実に奪ったようで、両腕からするりと抜け落ちてしまいそうだ。
 その身体をしっかりと受け止め直し、ゆっくり床に腰を下ろさせると、余韻を楽しむように軽く唇をついばむ。 子供のように座り込んだ光稀は軽く見上げるようにして、キスの雨を受け止めていた。実はこの瞬間が好きだったりする。光稀は素直だし、心も身体も満たされているからだ。

「光稀、好きだよ」

 聞いているのかいないのか、わからなくてもその言葉を囁く。
 気だるそうに持ち上がった腕が、その言葉に応じるように俺の背中を抱き寄せた。


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真実からの蜜月 3

 朝の柔らかい日差しが寝室に差し込み、光稀の色素の薄い髪を金色に染めている。
 寝顔を見ていると起こすのをためらうのは、昨夜というか無理をさせたからという事も一因ではあるが、滅法寝起きが悪いことの方が最大の理由だ。

 だが、いつまでも手をこまねいている場合ではない。
 すでに朝食の用意は整っており、あとは着席するだけ。
 意を決して起こそうとした時、ベッドの中の光稀と目が合った。

「……なに?」

 予想通り、不機嫌そうな低めの声と訝しげな表情。

「もう、準備できてるから。早くおいで」

 あまりに冷たい態度に心が挫けそうになりながら言ってみる。小さく「ああ」なんて声が聞こえた後、ガサゴソと起きる音を背中で感じた。

 半ば強引に俺が押しかける形で同棲は始まった。少しずつ荷物が増える事に、最初は抵抗を見せていた光稀も今では戸惑いながらも受け入れつつある。
 そう感じさせてくれたのは、部屋の合鍵を渡された時。ぶっきらぼうな態度で何かを俺に押し付けるとその手の中に鈴の付いた鍵があった。
 そういえばあの時、ほんの少し顔を赤く染めて言い訳じみたことを懸命に言ってた気がする。そんな姿が可愛くてあまり内容も聞かずに抱きしめて……。

「朝っぱらから百面相か?」

 その声に強制的に現実に戻されるとすっかりスーツを着て仕事モードな光希がすぐ隣に居た。

「あ……れ?」

 珍しく眼鏡を掛けている。いつもと異なる姿に目を奪われて、コーヒーを淹れる手が止まってしまった。

「なんだか目がゴロゴロするんだ」

「大丈夫なんですか?」

 まだ違和感があるのか、眼鏡を外し目を擦ろうとする光稀のその手を取り上げ、顎をすくい上げるように添えると、驚きに大きく見開いた目を覗き込む。

「なっ……なにっ?」

「見た目に何かあるわけではなさそうですね」

 ホッとする俺とは逆に、手を払いのけ動揺を隠せない様子の光稀が睨みつけている。その口元が小さく動いたが、何と言ったのかはわからなかった。

「光稀?」

「うるさいっ、も、いいからっ、離れてろっ」

 俯きがちに両手で胸を押し返され距離をとられる。
 その表情は見えなくて、どんな顔で言ってるのかわからなかった。

 それから後、光稀のご機嫌は下がる一方で取り付く島もなく、ついには出勤時間となってしまった。


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真実からの蜜月 4

 朝の一連の事を思い出すと、柄にもなくため息が出る。一体何が光稀の気に障ったのか……、さっぱりわからないままなのだ。
 多分、説明を求めたらもっと状況が悪くなる……気がする。
 こんなすれ違いがこの頃多い。そういえば、光稀が夜中に起きるようになったのも同じ時期だ。妙なシンクロに胸騒ぎを感じた。

「……高野さんっ?」

「え?」

「もう、聞いてなかったんですか?今度の飲み会、高野さんも参加でいいんですよね?」

 今回幹事を担当する1コ下の後輩だった。出欠を取るのに必死ですって顔をしている。

「あ、ああ……だな」

 開催日をチラリと確認しながら、適当に相槌を打っておく。飲み会は特別な事情がない限りは絶対参加。職務を円滑に行う為にはなくてはならないものなのだそうだ。
 そういう体育会系なところが嫌だとコッソリため息をつく同僚は少なくない。

「前回のように突然消えるとか、勘弁して下さいよぉ~?」

「え?あぁ。予定、空けとく。今回は大丈夫だから」

 笑いで取り繕ってみるが、後輩の目は疑いに満ちている。
 以前、飲み会の最中に姿をくらました為に部署内のヒンシュクを買った俺はその穴埋めに随分奔走した事をその理由と共に思い出す。

「それで、その時の恋人とは上手くいってるんですか?」

 後輩が呆れたように言うのが聞こえて、まあなと応じる。
 上手くいってる、といえばその通りな状況のはずなのに、なんとなく釈然としない何かが引っかかる。その正体がさっきからわからなくてモヤモヤとするのだ。


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真実からの蜜月 5

「……高野さん?」

「ん?ああ、飲み会っていつだっけ?」

 迷いを吹っ切るように話題を強引に変える。

「え、来週の金曜日です」

「わかった、必ず空けておくよ」

 まだ何か言いたそうな後輩を適当にあしらって、何気なく携帯を確認する。メールの着信が点滅しているのが見えた途端、一瞬にして心が躍るのを隠しきれない。
 メールの相手は光稀だ。先ほどまでの暗雲がぱっと音を立ててかき消され、さらに気持ちが舞い上がるのを感じる。

『待ち合わせて外で食事でもどう?』
 たったそれだけの内容だったが、それだけで十分だ。
 光稀がどんな気持ちでこれを打ったのか考えるだけで嬉しくなる。
 付き合い始めてからも、光稀からの連絡はほとんどない。こちらから連絡することの方が多いから、自然と回数が減るのだろう。意思表示の少ない光稀がわずかに示してくれるその反応を見つけ出すのが小さな幸せの一つだ。

 速攻で返信を送りながら、午後からの仕事をどう早く切り上げるかを算段し始めていた。

 待ち合わせた場所には、すでに光稀が到着しているのが見えた。息を切らして近寄ると俺の姿に気づいたのがわかる。

 結局仕事を終えるのが遅くなってしまった。それもこれも来週に控えている社内の飲み会までに片付けておく仕事が山積みだから仕方がない。

「ごめん、遅くなった」

「ん、いいよ。こっちこそ急にごめん。仕事、最近忙しそうなのに」

 そんな風に気を使ってくれる恋人を待たせるなんて、自分の本意ではない。なのに時計を見ると約束の時間をすでに30分も過ぎていた。

「店、予約してあるから行こうか?」

 せめてもの罪滅ぼしに……と、俺が出来た事はそれくらいで、本当は少し買い物でもしてから移動予定だったが、もうそんな時間の余裕も無くなっていた。

 そこは職場の飲み会で何度か使ったことのあるお店で、内装も落ち着いていて何よりも個室になっている点が仲間内でも高く評価されている。一度光稀を誘ってみたいと思っていたお店の一つだった。


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