長月の戸惑い
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新作を乱立しても
自分の首を絞めることにしかならないとわかっているのに
どうしてでしょうね?
やっぱりこのお話は書きたかったのです
そう言う事で……
ぼちぼち更新します
早海さんの秘書のお話です
彼の傍でその姿を見ていることができるのならば、それだけで充分だと思っていた。
それ以上を求めても彼の傍に居続けることはできくなってしまう。
それぐらいならこの気持ちを押し殺して、例え自分の想いが伝わることが一生来なくてもかまわない。
友人としてならば自分は彼から離れることはない。
そう信じて初めて出会ってから今まで惹かれる気持ちを隠したまま、早海 正嗣という男についてきた。
それなのに……。
今、目の前にいるその男は明らかにイラついていた。
つい最近、この男は誰かに本気になることを覚えたのだ。
相手は玉城 由宇。女みたいな名前だが男だという。
早海の趣味は理解しているし、自分もそれについてとやかく言うつもりはなかった。お互いに大人で、そういう処理は必要不可欠なことだと理解しているからだ。
ただ、今までと違う事はただ一つ。本気になったことのない早海に本命ができたという事。それほどまでの相手に巡り合えたのは奇跡に近いかもしれない。それほどまでに早海の隣の席は入れ替わりが早かった。
それだけに、玉城 由宇という新しい恋人の出現には興味が惹かれ、そして妬ましくて仕方がない。
どれだけ早海がそちらに時間を費やしているのかなど、その相手は自覚しているのだろうか……?
こっそり様子を窺い見ながらコーヒーをカップに注ぎいれる。
あの様子じゃ今日一日は仕事になりそうにもない。
長年一緒に居た経験から割り出された結論は、100%に近い確率で当たるようになっていた。
「そんなに不安なら見に行ったらどうなんだ?」
見ていられなくなって声をかけた。
朝から1時間置きに電話をかけているのだが繋がらず、その職場に電話を掛けたのが12時過ぎ。どうやら早海の恋人は体調不良で仕事を休んでいるということだ。
本来ならそこで一安心するところだろう。だが、どうやらその情報をくれた相手は以前一悶着あった人物のようだ。できればそんなヤツの助けは借りたくなかったらしい。
聞かずとも電話の内容を聞いていれば簡単にわかる。
他人事だから見ているのは楽しい。けれど、それが仕事にも及ぶのは御免こうむりたい。
「本郷……」
早海がようやく出口を見出したように呟いた。
「今のお前は使い物にならないから、そう言ってるんだからな」
勘違いするなと付け足しておく。
別に二人の仲が戻ろうとも終ろうとも自分には関係がない。
「あと、頼む」
そう言うと急ぎ足で社長室を飛び出していく。その後ろ姿と締まる扉を見送って、人知れず本郷 聡志(ほんごう さとし)は長い長い溜め息を吐いた。
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はじめに……
最近、冒頭で作品についてちょっとしたことを書いてみようかと考えてます
もちろん読みたくない方はすっ飛ばしてくださってOK!
「まえがき」みたいなものだと思ってお付き合いしてくださると嬉しいです
もう少し長めでのアップを考えてましたが
この辺が今回の限界みたいです orz
もうちょっと楽しみたかったなって方
本当に申し訳ありませんっ
明日、またアップするんで許してくださいね
早海との出会いは高校の時だ。その時から早海は強引で、自信家な奴だった。同じクラスになることもあったがその頃はまだ顔を知っている程度で、大学に進学してから、偶然早海と再会してからの方がその距離は縮まった。早海の趣向を知ったのも同じ頃。でもその対象に入りえないのはわかっていた。傍で見ていればわかる。早海が好んで付き合う顔かたちや性格などが自分とは全く異なっていたから。
社長室の前室にある自分のデスクに座る前にもう一人のサポート役である同僚に近づくと、そのデスクの上に社長室で淹れてきたカップを置いた。
「門脇、社長の昼からのスケジュールだが、すべてキャンセルだ」
「えぇっ? 今からですか?」
「ああ。社長は急用ができてそちらへ向かった」
「……わかりました」
どんな急用かなどは秘書に関係ないのだ。けれど……、
「雪、すまないな」
門脇 雪人(かどわき ゆきと)の身体を包むように背後から抱き締めた。
「えっ、どうして本……聡志さんが謝るんです?」
突然の行為に戸惑いを隠せず、顔を赤らめた門脇が不思議そうに尋ねてくるのを無視してその唇を塞いだ。
門脇 雪人と肉体関係を持ったのはつい1週間ほど前のことだ。
社長である早海の秘書として門脇が配属されて数か月。そつなく何でもこなせる門脇をそれでも指導してきたのだが、その際に彼の目に宿る何かをみすみす見逃してはいなかった。
優しい印象を受ける従順な瞳もちょっとした仕草も、全てが本郷1人に向けられていた事を気づかないほど鈍感でもない。
手を出さなかった理由。それは門脇が本気過ぎるからだ。
自分が本気になれないとわかっているのに中途半端な気持ちのまま、本気の門脇に手を出すのは違うと思っていた。それでもこうして関係を持ったのは、もう自分の気持ちが完全にあの男には届かないと知ってしまったからか……。
本郷は自分の気持ちを冷静に分析しながら門脇から身体を離した。
「……キャンセルの連絡しておきます」
「ん、頼んだ」
まだほんのりと色づいた頬と動揺を隠せずに揺らめく瞳を隠すように俯くと、門脇は机の上に置かれたコーヒーでキスの余韻を取り除くかのように一口だけ含んだ。
「社長って何時に戻られるんでしょう?」
しばらく電話の相手と話し込んでいた門脇がおずおずと、今更ながらに尋ねてきたのはそれから随分時間が経ってからだった。
今日の予定はすべてキャンセルと言った理由が、「いつ戻るかわからない」という事だと、門脇なら説明しなくても理解しているはずだ。それをわざわざ聞いてくるという事は……。
「どうしても今日中でないと無理だと……」
困惑の表情を見て随分手こずっているのがわかる。
恐らく電話の主はうちより上位会社なのだろう。
一度は日程の変更を承諾していたのに無理なことを言ってくるような候補を頭の中でいくつかリストが挙がる。
「わかった、善処すると伝えておくんだ」
「はい……」
本郷に手間を掛けさせたことを気にするかのように小さく返事をすると、相手の社名が書かれたメモを本郷に手渡した。
電話の向こうには姿が見えていないというのに頭を下げている門脇が見える。そんなところが素直で可愛くて、どこかしら苛めてみたい気になってしまう。そんな気持ちを抑えながら本郷はすっかり覚えてしまった早海の携帯番号を押した。
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はじめのひとこと……
今回ちょっと長めかな?
楽しんでいただけると嬉しいです
最近、拍手コメントの設定をよく変更してるのですが、
うまく設定できなくて悩んでおりましたw
もう大丈夫だと思うのですが
ご迷惑かけてたらごめんなさい
ではでは、また明日、
できたらこの時間(19時)くらいを目標に
数回のコール音がして、留守番電話に接続される。何度電話しても状況は変わらない。
何してるんだ? 早海……。
仕事を抜け出して恋人の元へ行ってるという自覚はあるはずだ。なのに携帯の電源を切っているという事は、邪魔をされたくない状況だという事なのか?
時刻は19時を回ろうとしていて、相手の会社にはすでに限界まで待ってもらっている。これ以上は待てない……。そう思った時に秘書室直通の電話が鳴った。
「社長……」
電話を取った門脇があからさまにホッとした声を漏らしたのを聞いてその受話器を半ば強引に取り上げた。
「早海、どれだけ電話したと……」
感情的になってつい普段話すような口調になってしまう。
門脇の視線に気が付いて、その視線を避けるように社長室へと移動する。防音設計になっているその部屋なら落ち着いて話せるだろう。背後で重い扉が閉まるのを確認すると、まるでそれを待っていたかのように早海の声がした。
『本郷、落着け。もう俺から連絡して向こうの理解を得た。これからそっちに戻るから』
この部屋を出て行った時とは明らかに異なる落ち着いた口調。
それだけの事なのに、うまくいったのか……と確信する。
『すまない、本郷。助かった』
耳を疑うような言葉が続いて、一方的に電話は切れた。あの早海が他人に感謝することなどありえないと思っていた。
それさえも、今の恋人の影響だという事なのか……?
自分でも気づかないほど受話器を強く握りしめ、本郷は湧き上がる黒い感情を押し殺すように唇を噛んだ。
「本郷さん、社長はどうでしたか?」
戻ってくるのを待ちわびていたかのように心配そうな門脇が近づいてくる。
「もう少しで戻ってくるはずだ」
そっけなく返答し、門脇を避けるように自分のデスクに戻ると、不安そうな彼を見つめた。
冷たい態度を取られるのか理解できず、どうしていいのかわからないような顔を見て少し罪悪感が芽生える。
「雪、こっちに」
自分の膝を示して本郷が呼ぶ。出来る限り威圧しないようにしながら手招くと、周りを気にするように、でも自分から本郷の元へやってくる。
「大丈夫だ。早海はまだ戻ってこないから」
甘い口調で語りかけ門脇の腕を捕まえると、引き寄せて自分の膝の上に対面になるよう座らせた。
それだけのことで見る間に赤くなり、自由なもう一方の腕で本郷との距離を保とうとする。
「聡志さっ……こんな所ではっ」
小さく悲鳴を上げる門脇の小さな抵抗すら物ともせず、彼の身体を強引に抱き締めると服の上からその身体のラインを撫で上げる。
早海がこちらに到着するのはあと2~30分は掛かるだろう。この時間の道路事情は少し混みあうからもう少しかかる可能性も否定できない。
その間にできない事も、ない……。
今の苛立った気持ちを抑える為だけに、このまま門脇を押し倒して無理矢理にでも繋がり、激情に身を任せて少しでも荒ぶった気持ちを発散することは可能だ。だけど、それではこの感情を充分に解放させるには到底収まりがつきそうにない。そう、時間をかけて何度もその身体を貪り尽くすまでは……。
膝の上に乗せた門脇のさらさらとした髪をなだめるように撫でてやりながら、乱れよがる門脇の色っぽい身体に想いを馳せて、降り注ぐ慈雨のようなキスを追いかけた。
「雪、俺の部屋にくるだろう?」
そっと、囁くように誘う。
瞬時にビクンと反応するのがその身体に触れていた手を通して伝わる。拒否などできないはずだ。すでに変化が始まっていることは門脇自身がわかっているのだから。
案の定、彼は本郷に小さく頷きを返した。
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はじめに……
今回、早海さん、ご登場します
由宇と関係が戻ってご満悦なんです
二日連続、長月の戸惑いをアップしたので
『新月の暗闇に紛れて』をお待ちの方は
明日……たぶん……もしかしたら……
あはは……(笑)
では、また明日っ
それから数十分ののちに戻ってきた早海を本郷は一人で出迎えた。
「本郷だけなのか?」
部屋に入ってくるなり辺りを見回し、早海は確認するように言った。
門脇は先に帰らせていた。もちろん本郷の部屋の鍵を渡し、煽るようなセリフと共に。
門脇の困ったような顔は本郷の加虐的な部分を刺激する。思い出しただけで口角が上がりそうになるのを完璧に隠し、本郷は早海に何事もないような顔をして、微笑みさえ零す。
早海はというと奥の社長室までは行かず、本郷のデスクに背をつけてニヤリと笑っていた。
「俺が待っていたのは不服なのか?」
「いや。お前だけで十分だよ、本郷」
まるで殺し文句だ。
心の奥底がゾワリと何かが逆立つような、手で胸の内側を鷲掴みにされ搾られるような感覚に襲われる。
これだ。早海のそんな他愛のない言葉に絡め取られて離れられなくなる……。
諦めようと何度思ったことかわからない。でもその度に引き戻された理由は、早海が自分を求めるような言葉を発するから。たとえ勘違いだったとしても、自分一人に降り注がれるその言葉をいつまでも聞いていたいと望んでしまう。
心の奥底深くに仄暗い光が灯っていることを自覚しながら、早海に明日のスケジュールを最終確認した。
「電話の件だが……」
黙って報告を受けていた早海が重い口を開く。
そうだその一件を聞き逃していたのを思い出す。
「明日の昼食は空いてるみたいだから、そこに入れられるか?」
「ああ、何とか大丈夫だろう」
直前の予定を確認すると場所さえ選べば可能なはずだ。いくつかの候補地を思い浮かべながら手帳に書き込む。
「相変わらず、几帳面な文字だな」
気づくと手帳を覗き込もうとする早海が本郷に影を落としていた。
「こっちに来るな、手元が見えない」
すいっと距離を保つと最後の一言を手早く書き添えて手帳を閉じた。
冷静な態度をとり続けるフリはもう手慣れたものだったが、さすがに接近されて理性を保てるかは自信がない。
「冷たい奴だ」
クッと喉の奥で笑うかのような早海に『どっちが……』と毒突きながら帰り支度を始める。
「送ってやろうか?」
「いや、構わない」
短く答えるとつまらなそうに指で車の鍵ケースをくるくる回しながら、部屋を出て行こうとするのが見えた。その後ろ姿を見ながら軽く息を吐きだすと追いかけることにした。
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はじめに……
はい、落としてしまいました
いいわけですが
本日発売の
iPhoneが悪いのです
そう言う事にしてくださいっ
そんなわけで、ようやくのアップ
今夜はR前夜祭です
ってか、Rってわかるようにした方が良いの?
職場にほど近い場所に本郷はセカンドハウスとして部屋を借りていた。
今夜はそこに本郷の帰りを待っている門脇がベッドを温めているはずだ。彼に渡したのとは別の鍵を使って部屋に入ると、中は暗くてしんと静まり返っていた。
元々暮らすために借りている訳ではない。だから必要最低限のものしか置いていないその部屋は、シンプルすぎて生活感などは全くない。足元を照らすセンサー式の間接照明が歩くほどに明かりを灯し部屋の奥へと導く。
一番突き当りの、夜景が綺麗に見える部屋にベッドは置いてあった。その上で猫のように丸くなって無防備に眠る門脇の姿が見える。上着を脱ぎつつ足音をさせないようにそっと忍び寄り、シーツに潜り込むとその身体を背後から抱きしめた。
「ん……」
小さく声を漏らす門脇はまだ眠っているらしく、本郷の存在に気付いた様子はない。それを良い事に細い首筋の髪の生え際辺りに唇を落とした。
「ぅんっ……っ」
突然の感覚に驚いたような、先程とははっきりと色の違う声が上がり、その身体は本郷から逃げるようにしなった。それを両腕で繋ぎ止め、互いの身体が密着するように腰から下の部分を門脇の丸みを帯びた双丘に添わせる。その間も本郷は門脇の首筋から唇を離すことはなく、顔を埋めていた。
「本郷……さん?」
「名前で呼んで欲しいな、雪」
「だって……あっ……ん」
低く声を響かせてワザと吐息を吹きかけてやると、門脇は言葉の途中でくすぐったそうに首をすくめる。追い打ちをかけるように耳の後ろへ口づけ、更に舐め上げると門脇が息を呑むのが分かった。
「ココ、感じる?」
「ん……、ヘンな、感じがする……」
「へぇ……、どんな風に?」
甘く甘く囁き、パクリと柔らかい耳たぶを甘噛みする。その途端まるで活きのいい魚のように身体が跳ねて、本郷に下半身を押し付けるように動いてしまう。
服を通してでも門脇の体温が急上昇してくるのがわかる。
「背中が……ゾクゾク、して……くすぐったいのに……」
「気持ちイイ?」
「んっ……聡志……さっ、……ん」
律儀にその感覚を伝えようと言葉にする。そんな素直で健気な姿に本郷の加虐的な要素が刺激されて聞かずにいられなくなる。
「もっと欲しい?」
息を詰め、恥ずかしそうに頷きを返す門脇を、息を潜めてタイミングを窺う獣のような眼で見つめた。
拍手・コメントありがとうございますっ
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