月はセピアに色づいて

カテゴリ:月はセピアに色づいて の記事一覧

本郷さんの秘密

はじめるまえに……

 最近あまり明るい話を書いてないので
 息抜きにお付き合いくださいっ

 このカテゴリ「月はセピアに色づいて」は
 各ストーリーの登場人物の記憶に残る過去のお話を書いてみようっ
 というわけで立ち上げました

 まぁ、
 いわゆるサイドストーリー的な?
 そんなわけで
 今回は

 「長月の戸惑い」より、「門脇 雪人」の記憶に残る過去のお話です

 もしも、奇特な方がいらっしゃって、

 「この人とこの人のCPで書いてほしい」

 などのご要望があって、、
 非表示でもコメントでリクエストをいただけたら
 お応えするかもしれません

 早海×本郷
 とか
 早海×光稀 
 とか
 由宇×早海
 とか
 直樹×隼人
 隼人×裕司
 なども
 何でもアリですよ?
 その場合は記憶じゃなくて夢落ちの場合もありますけれど……

 あくまでもサイドとしてお楽しみいただけたらいいなぁと思います

 気が向いたらリクください


 ではでは、楽しんでいただけたらいいなぁっ (*≧艸≦)




 それは僕こと、門脇 雪人が秘書室に配属されてすぐのこと。
 この会社の社長である早海さんが、本郷さんに隠れてこっそりと近づいてくると耳打ちするように囁いた。

『本郷が持ってる手帳、見たことあるか?』

 それは本郷さんが肌身離さず持ち歩いている1冊の手帳。いつも何かを書き込んではいるけれど、そう言えば中を見たことがないし、見せてもらったこともない。
 何を書き込んでいるのか、後輩としても部下としても非常に気になっているけれど、おこがましい気がして聞けなくていた。

『今度一度覗いてみるといい。面白いものが見れるから』

 悪戯っぽい目で早海さんはそれだけを言うと、本郷さんに見つからないようにまた離れていった。
 それ以来ずっとその手帳の事が気になってしまって、目で追いかけるようになっていた。そんなある日、珍しく本郷さんの机の上に手帳が置いたままになっていた。
 どこからどう見ても、いつも持っているあの手帳。辺りを見渡しても姿は見えず、今ならこっそりと見たところでバレることはない。
 僕は少し思案して、そして……誘惑を断ち切った。
 やっぱり、他人の物を勝手に見るなんてダメだよね……。

 そうは思っても、やはり未練は残ったけれど、自分だったらきっとこっそり見られるのは気分が悪いはず。
 いつか、本郷さんが自分から見せてくれる時まで、その時まで待とう。
 それ以降手帳の存在は忘れるように心掛けたのだった。


 給湯室へ行くと女の子たちの声が聞こえる。
 雑談するのはやはり給湯室と相場は決まっているらしいけど、そこに堂々と入っていけるほど僕は肝が据わっていなくて、彼女たちの会話が収まるのを待つことにしていた。

 別に聞くつもりなんかは全くないんだけれど、勝手に耳に入ってしまうんだから仕方がない。

『そうそう、また更新されてたの。例の人のっ」
『ああ、あのレビュアーさん?』

 レビュアーっていうと……○べ○グってサイトのユーザーの事らしい。
 女性はそういう会話が好きだから、まだまだ時間が掛かっちゃうんだろうな……。

『そう、ごうさん! 今度はスペインバルに行ったみたいでさぁ……』
『あの人のレビューってホント率直だから、参考になるのよねぇー』
『そうそう、だから今度行かない? その店』

 ごうさん……か。
 そのサイトは僕も良く利用していて、確かに彼女たちが言うように彼もしくは彼女のレビューはとても参考になる。
 金額帯から各料理の細かい見た目、完成度、味。どれも的確な評価で、あの人のお奨めならば間違いないと思える。仕事関係の人と食事に行ったり、会食の用意をするのも結構参考にしたりしている。
 女性たちに大人気みたいだよ、良かったね……。
 心の中で祝福しつつ、僕はその場から離れることにした。
 どうも、女の人は苦手だ……。


 本当はお水を少しばかり欲しかったんだけど、仕方ないから後でまた来ることにして……。そんなことを思っていると前から本郷さんがやってくるのが見えた。

「こんな所で何をやってるんだ?」

 そう言いながら、近づいてきたからすかさず手に持っていたカップを隠す。

「あー、えっと……」

 言いにくそうにしていると、手に持っていたカップが見つけられてしまう。

「中に入ればいいだろう?」

 そう言って本郷は中の様子も気にせずに給湯室に入っていく。

「あっ、本郷さっ」

 慌てて追いかけたけれど、時すでに遅く。本郷さんは女性たちの聖域に入った後だった。
 本郷さんと入れ替わりに、そこを占有していた女性たちが出てくる。
 若干不服そうな顔の彼女たちは、それでも秘書室の高嶺の花、本郷さんと最接近できたことでやや頬を紅潮させて恥ずかしげに見えた。

「ほら、気兼ねなく使えるようになったぞ」

 本郷さんはというと、全くそう言う事に興味なさそうで。僕にそういうと得意げに言って見せた。それを見た僕はというと、そんな本郷さんに苦笑するしか無くて、そういう彼が『彼らしいな』なんて思ったりしていた。


「さっきの、給湯室にいた女の子たちですけど……」

 秘書室に戻るまでの間、僕は本郷さんに話しかけた。

「ん……? ああ」

 そういえばそんな存在もいたなと言いたげな様子で、でも話を聞いてくれようとしているのがわかる。

「彼女たち『ごうさん』っていうレビュアーの話をしていたんですよ」

 何気なく言った言葉だったのに、一瞬本郷さんの様子がほんの少しだけ変わった気がした。それはしっかり見ていないとわからない程度の変化だった。

「へぇ……それで?」
「最近そちらでは話題の人みたいですね。彼女たちも随分信頼してるようでしたよ」
「……」
「僕も気になってるヒトなんです。一体どんな人なんでしょうね?」

 そんなことを言っているうちに秘書室に到着してしまう。

「……気になる……か」

 本郷さんが言ったその言葉は微かに聞こえただけだった。たぶん聞かせるつもりなんてないようだったから、あえて追求しなかったけれど。ほんの少し嬉しそうな顔をしたのは気のせいだったのかな……?



 そんなことがあってからしばらくして、たまたま本郷さんの手帳を見る機会が巡ってきた。
 日程の打ち合わせをするために本郷から見せられたから、不可抗力。
 そこには、きっちりとした本郷の性格通りにメモ書きがいくつかあって、その中の1か所に見慣れない名前があった。どうやらどこかのお店の名前らしいのはわかったけれど……。すごくそれが気になってしまった。

 そして数日後。
 『ごうさん』のページは更新された。
 紹介したお店は、あの時僕が見た見慣れない名前と同じで、それだけで察してしまった。
 ごうさんは……本郷さんの事なんだ。


『意外な趣味だろう? 俺が薦めたんだけどな』

 後に早海さんに尋ねたら、ニヤリと得意げに笑ってあっさりそう答えた。
 あのサイトに『ごうさん』の名前でページを作ったのも早海さんの仕業らしく、それを律儀に更新し続けている本郷さんもらしいと言えばらしくて……。
 その時初めて、社長である早海さんに嫉妬を覚えた。


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遭遇はいつも波乱万丈 ──セカンドインパクト


はじめるまえに

 番外編~!
 あの4人が再び出会ったら何が起こるんでしょう?

 そんな事を考えたらやめられなくて
 書いちゃいました!

 ちなみに、今朝
 電車の中で妄想して書くのに夢中になりすぎまして
 下車する駅を降り忘れ、
 そのために
 遅刻3分前にタイムカードを押しました (^_^;

 ああーぎりぎりセーフっ!!

 まぁ、そんな犠牲の上に出来た作品です。

 どうぞ、お楽しみくださいませ (≧▽≦)ゞ
 



 いつものように週末は訪れて、定時が近づくほどに後輩、玉城 由宇(たまき ゆう)の気がそぞろになっているのが傍目からも良くわかる。
 高野もまた定時が訪れるのを心待ちにしていたからか、玉城の気持ちはよく分かった。

「あんまり浮かれてるとミスするぞ」

 一応、先輩らしく釘を刺しておく。玉城は高野に気づかれていたことに照れるように笑うと、それからは少しだけ落ち着きを取り戻したように見えた。

 17時の定時を過ぎ、片付けが終了した玉城はいそいそとエレベーターに向かう。その後ろを高野はゆっくりと歩いていた。

「あれ? 高野さんも定時って珍しいですね?」
「ああ、待ち合わせがあって」

 エレベーターホールで先に待っていた玉城に声を掛けられる。

「ああ、一緒……ですね」

 少し照れ臭そうに笑って見せる。たとえその気がなくても彼の可愛い仕草に、油断していると心を射抜かれてしまいそうになるのをギリギリで踏みとどまる。それでなくても、最近の玉城は以前に比べて色気が滲み出るほどで、職場内でもその色香に惑わされている同僚は少なくない。
 本人にはその自覚が全く無いようで、こんなに無防備じゃ恋人である早海も気が気ではないだろう……。
 さすがの高野も早海への同情を禁じえず、そんな事を考えているなんて知らない玉城は、ようやく降りて来たエレベーターに先に入ると、人懐っこい笑みで高野を迎え入れた。

「今日はお迎えじゃないのか?」

 エレベーターを降りて出入り口に向かう高野は、以前車で早海が迎えに来ていたのを思い出し、一緒に駅に向かって歩いて来ようとする玉城に尋ねた。

「ええ、今夜は彼が昔通ってたっていう店に行く事になってて……」

 嬉しげに微笑む玉城に、高野は微妙な気持ちになる。
 なんとなく、その通っていたという店を自分は知ってるような気がして。

「そう言えば高野さんも待ち合わせ、こっちなんですか?」

 無邪気に行く先が同じ方向なのを確認する玉城を見ながら、頷きを返した。

 同じ駅前で同じような待ち合わせ場所。もう、確信に近いような予感と、そして……。
 到着した場所には、高野の恋人である沢良宜 光稀(さわらぎ みつき)の姿と共に、早海の姿が揃って見えて、高野は諦めたようにため息を落とした。

 高野と玉城が一緒に現れたことで見るからに不機嫌になった早海を後ろにして、隣を歩く沢良宜は高野に申し訳ないと気遣いながら苦笑した。

「ごめんね。突然こんな事になって」
「まぁ、光稀が悪いわけではないし」

 そう言いながらも高野にしても複雑な気分だった。到着した時には、早海達と一緒に食事をするという流れになっていて、突然決まった予定に諸手を挙げての賛成というわけではない。
 それに、光稀も早海に押し切られただけなのだろうと思うと、大人気なく拒否するわけにもいかない。
 だから、自分で招き入れておきながら、不機嫌な態度をとる早海にいささかイラつきを覚えていた。

「大人気なく駄々をこねても仕方ないだろ?」

 ワザと後ろに聞こえるように高野は言った。挑発を仕掛けるような嫌味に、早海が聞き捨てならないと身を乗り出してくる。

「俺がいつ駄々をこねたというんだ?」
「その態度がそうだと言ってるんですよ、早海さん」

 わからないんですか? と言いたげに高野はさらに冷たく言った。

「アレくらいで機嫌を悪くするのは大人気がない」
「それは君も同じじゃないのか?」

 そんな折り合いのつかない会話が続く中、沢良宜は心配げに二人の様子を窺う玉城に近づいて、微笑みかけるとその隣の位置を獲得する。

「あの二人はいわゆる犬猿の仲ってヤツだから、放って置いた方が良いと思うよ?」
「は……あ、でも、……」

「そう言われても気になる?」
「は、……い」

 話をしたこともない高野の恋人。
 以前一度会ったことがあるだけの存在だった。
 大人っぽく、中性的な綺麗さは自分とは全くタイプが異なっていて、高野が急激に魅力的な変化を遂げた原因のヒトだと思うとやけに緊張してしまう。
 近くで見るとぼぉーっと見惚れてしまいそうだ。

「えっと……玉城、くん?」

 穴が開きそうなくらいじっと見つめられて、沢良宜が困ったように呼びかけるのを、玉城は夢見心地で聞いていた。

「あ、はい?」
「下の名前って?」
「由宇、ですけど?」
「ふうん、かわいいね、由宇」

 魅力的な微笑みで名前を呼ばれて、早海に呼ばれるのとは別の恥ずかしいような思いに玉城は顔を赤く染めた。

「あの、……オレにも名前、教えてください」
「ん、光稀だよ、沢良宜 光稀」

「光稀……さん」

 自分自身に教えるように小さくつぶやく玉城の瞳を、沢良宜は見つめ返しながら満足そうににっこりと微笑んだ。

 そんな甘い空気を作っている様子を前を歩く男二人が言葉もなく見ていた。

 あまりにも子供っぽいことで争っていたら、とんだ漁夫の利を得てしまう第3の可能性を見出してしまったようだ。

「光稀」
「由宇」

 二人同時に互いのパートナーの名前を呼んで、その隣に立つと由宇と光稀を切り離そうと試みる。

「もう、将人は早海さんと話をしてたらいいだろう?」
「いえ、もう充分、話しましたから」

「そうそう、光稀。ケリは付いたから心配しなくてもいい」

 妙に意気投合して沢良宜と玉城が二人っきりになるのを阻止しようとする二人を、沢良宜はおかしそうに笑って、

「由宇はオレがきちんと相手するから、良いんだよ、別に。ね?」

 玉城へと同意を求めると、それに玉城も同調する。

「そうです、早海さんも、もっと高野さんとお話して和解してください」

 タックを組んだ沢良宜と玉城は、早海と高野のにわか協力体制に比べて強力で、二人を追いやるような素振りだ。

「オレはもっと光稀さんとお話がしたいです」

 素直で率直な玉城の言葉に早海はショックを隠せず、

「オレも由宇ともっと話がしたいから。高野は早海さんの相手をしてていいよ」

 笑顔で光稀に言われた高野も項垂れてしまい、それを見て沢良宜と玉城はクスクスと笑いあう。
 
「じゃぁ、お店、案内してもらえますか? 光稀さん」
「うん、もうすぐそこだから」

 互いのパートナーに先頭を譲った高野と早海の二人は残されて、

「お前とは全く気は合わないが……」
「それは同感です。でも今だけは……」

 互いのパートナーを取り戻すため、そりの合わない者同士がその心を一つにしようとした、そんな奇跡の瞬間は、店に着いた後もずっと続くのだった。 



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蜜月なX’mas その1

はじめるまえに……

 本日2度目の更新です
 とりあえず、
 クリスマス企画の第1話
 メインは『蜜月の隣で』の早海×由宇です
 明日はアップできるかな……

 ではでは、どうぞっ (≧▽≦)ゞ




 あと1週間で恋人たちの大イベント。クリスマスはもう目前だ。
 冬の街角はそれ一色に染まり、流れる音楽も視界を彩るポップも、何もかもが華やいでいて、少し前までならばオレの気分もまた高揚する、そんな風に思い込んでいた。

 早海と暮らすようになってからわかったことがいくつかある。その中の一つ、彼が社長を務める会社は思っていた以上に大きな会社だったこと……。いわずもがな、彼は多忙だった。だから……、彼の姿を間近で見ているオレには、どうしても「クリスマスを一緒に過ごしたい」なんて言う言葉が、わがままに感じられて言い出せなくて。
 こうして街を彩るクリスマス情緒を、心から楽しむなんてことが出来なかった。

「由宇、おまたせ」

 街の景色を眺めるオレの前に、光稀さんが息を切って現れた。光稀さんはオレの職場の先輩である高野将人の恋人で、ついこの間知りあってからというもの、意気投合して互いにメールを送り合うほどの仲になった。早海さんとも旧知の仲で、その関係について詳しく聞いたことはない。トモダチ以上コイビト未満。そんな曖昧な立ち位置を、あの早海がずっと保ち続けていたなんて、ちょっと信じられない。

 その日、仕事が終わる間際、オレの携帯に光稀さんからのメールが入った。高野や早海を抜きに二人で会いたい。そんな内容だった。二つ返事で承諾し送信し、返ってきたのが待ち合わせの場所と時間の指定だった。
 ほんの少し早く到着していたオレは、光稀さんが来るまで店を回ったりしていたから約束の時間に少し遅れたくらいだったけど、それ以上に光稀さんも遅くなって。出会えたのは予定よりも30分ほど過ぎていた。

「ごめんね、随分待たせちゃったよね?」
「とんでもないです」

 オレのことを気遣ってくれる光稀さんは、すごく申し訳なさそうな顔をしていて、大丈夫なんて言うオレの言葉なんて聞いちゃいない。

「だけど、寒かったでしょう? 店とかで待ち合わせた方がよかったね、オレの方から呼び出したのに……」
「いや、本当に大丈夫ですから」

 彼は謝ってばかりだから、もう苦笑するしかない。

「それより、どうしたんですか?」

 オレの問いかけに、光稀さんはちょっと戸惑うような顔を見せて、それから店に入ろうと提案してきた。
 よくあるタイプのコーヒー専門店は注文がややこしいから、大体いつも同じようなものを頼んでしまう。カップのサイズなんて『普通』でいいんだよ……とか思っても、聞かれればやっぱりここはきちんと悩みながら、頭をひねって質問に答えるようにする。
 そんなオレの姿を光稀さんは笑いながら見ていて、スマートに注文をこなしていた。
 そういうところがやっぱり彼はオトナで、魅力的なのだ……。
 テーブル席は埋まっているから、仕方なくカウンターを確保する。時間をつぶす目的で来店している人がほとんどだから、テーブル席が空席がになるのは滅多にない。それに比べてカウンターは、座り心地が悪いから長居する人が少ない。

「それで……、あの二人に内緒の話ってなんですか?」
「うん……、っていうか、オレは将人が居なければそれでよかったんだけど……」

 その口ぶりからなんとなくの予想を立ててみる。
 この時期に高野さんに悟られないようにしてオレと会う理由とくれば……。

「クリスマスのプレゼント選び……」
「えっ? っていうか、どうしてわかったの?」

 いや、普通そんなところだろうと思うんですけれど……?
 光稀さんってちょっと天然。

「でも、どうしてオレなんかと?」
「相手が早海だと悩むこともあるんじゃないかと思って。それに、どうせ買い物するんなら1人より2人の方が楽しい、でしょ?」

 そうですか、つまりオレは買い物の道連れにされたって事……?
 口元にカップを近づけると、温かな湯気からコーヒーの香りを感じる。
 注文は難しいけれど、やっぱりここのコーヒーは美味しい。
 カップの中の漆黒のような液体をゆらゆらさせて、その液面を見ながら熱を冷ますように息を吹きかける。

「わかりました、お付き合いしてください」

 どうせまだオレも早海さんへのプレゼントは買っていなかったし、調度いい機会かもしれない。一緒に迎えられなかったとしても、彼へのプレゼントだけは用意しておきたい。

「じゃ、決まりだね」

 光稀さんの嬉しそうな声が、なんだかオレの心をほころばせてくれた。  


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蜜月なX’mas その2

はじめるまえに……

 久々に光稀も登場してみたりして、
 今回高野さんの登場はあるのか? 疑問ですw

 ちょっとだけ、ごく軽い目のえちシーンがありますが
 これくらいは許して……ください
 苦手な方はごめんね

 それでは、クリスマス企画:その2
 続きをどうぞ (≧▽≦)ゞ
 



 最初は何にするか考えてもいなかったけれど、一度何にするか決めてしまうと選択するのは早くて。
 それでも購入してから、なんだか恥ずかしいのと気に入ってもらえるのかっていう不安が押し寄せてきたりして。

「大丈夫だよ、きっと早海は気に入ってくれるからっ」

 太鼓判を押してくれる光稀さんの言葉で、少しだけ自信が出る。
 それは、カバンにこっそりと忍ばせておくには調度いい大きさなんだけど、そうするとラッピングが崩れてしまわないか気になって、ああでもないこうでもないと落ち着く場所を探す。

「そう言えば、二人はどう過ごすんですか? 今年は連休でしょ?」

 仲のいい二人の事だから、旅行とかするんだろうか……?
 でも、高野さんからはそんな気配は全く感じられないんだけれど。裏でコソコソできる性格でもないから、サプライズなんてありえないっぽい。
 やるとしたら、光稀さんの方が考えていそうだ。

「ん……多分家でのんびり過ごしてるんじゃないかな?」

 出ましたこのセリフ。長年連れ添った夫婦みたいなその余裕発言。あえてそんな特別なことはしないよってことなんだろうか?

「クリスマスディナーとか、無しですか?」
「えー、だって、男女のカップルじゃないし……恥ずかしいでしょ?」
「でも、個室とかなら周りを気にしなくても……」
「そういうのは庶民からは遠いんだよ」

 早海に毒されてるねぇと言わんばかりの光稀さんの言葉に、オレの方が恥ずかしくなってしまう。

「どこで過ごそうと、恋人と一緒ならそれが一番幸せだと思うよ」

 またしても大人な発言で、光稀さんは笑っている。
 確かにそれは正論だと思うけど、やっぱり特別な日は大好きな人と特別な思い出になるように共に過ごしたい……そう思うのはまだオレが子供っぽいってことなんだろうか。

 光稀さんと別れて、早海と暮らすマンションへ帰る。
 とは言っても、最近のあの人はとにかく忙しそうだから、どうせ部屋には誰も……。
 鍵を開けて思い玄関の扉を開くと、照明が付いている。
 消し忘れ……とか?

「早海さん……?」

 声を掛けながらコートを脱いで玄関先に掛ける。
 注意深く奥へと足を進めると、リビングに早海さんの姿があった。

「……こんなトコロで、もう」

 ソファの上に横になり、完全に目を閉じている。何時に帰ってきたのかわからないけれど、待たせていたんなら悪いことをしちゃったかな。
 一度寝室へ行くと、ベッドから毛布を引きはがして早海さんの元に近づく。
その身体の上に毛布を掛けると、オレの気配に気が付いたのか眠そうに目を開けた。

「由宇? おかえり」
「ん、ただいま」

 近づいたオレの腕が早海に捉えられ、引っ張られる。不意打ちの行為にオレの身体は彼の上に倒れ込むように引き寄せられて密着する。

「こ、ら。早海さんっ」

 離れようとするオレとそれを追いかけてきた彼の唇が重なる。離れてはまた角度を変えて、何度も啄むように口づけを交わす。瞬く間に早海はオレを毛布に巻き込んで、その身体の下にオレを組み敷いてしまう。

「早海……さん」

 1人なら充分広く感じても、2人だとさすがに狭く感じられるソファの上。オレの身体に乗り上がった早海は間近に顔を接近させてくる。
 
「由宇」

 その声はどうしようもなくオレを求めているから、動けなくなってしまって。
 息をするのも困難なくらい胸が苦しくなってしまう。

「好きだ……」
「ん……オレも……」

 彼の背中に腕を巻きつけ、しがみつく。
 こんな風に抱き合うのは久しぶりかも知れない……。
 海外への出張や取引先会社との打ち合わせ、それからオレの知らないその他の仕事。
 帰ってこれないこともあったし、帰宅しても休息を優先しないといけなくて。すれ違いの生活がここの所続いていた。……だから。
 オレが飢えてしまっているのも仕方ないんだ……。

 服を脱ぐのももどかしいくらい互いの身体を求め合って、獣のように貪られる。
 彼の性急な愛撫はオレの身体を掻き乱し、高められて奈落のような快楽に突き落とす。
 それでも追い求めてしまうオレは、早海の身体にしがみつき揺らされて、そして淫靡に蕩かされてしまう。
 いつも以上の激しい情交に、身体はすっかり汗でドロドロになって。
 ベッドの上に倒れ込むと、夕食を摂ることも忘れて眠ってしまった。



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蜜月なX’mas その3

はじめるまえに……

 本日2度目の更新でございます
 なんといっても
 クリスマスまでに最終回を迎えたいので
 かなり大急ぎで作ってます
 かなり無理してる……
 けど、がんばるっ!!

 そんなわけで、
 それまで「闇に月は融けて」はお休み……かな

 ではでは、クリスマス企画:その3
 続きをどうぞっ (≧▽≦)ゞ




 どれくらい眠っていたのかわからないけれど、目を覚ましてもまだ辺りは真っ暗だ。上手く働かない頭で、そう言えばベッドに移動したななんてうっすらとした記憶を思い出しながら、目覚まし時計を置いているあたりを手探りし、硬いものに触れてそれを引き寄せた。

「……1時過ぎてるし」

 ぼんやりと見える長針と短針の角度を見て判断する。
 気怠い身体を起こしてベッドの上に座り込むと、途端に空腹なのに気づく。
 そう言えば夕飯もまだだった。
 隣で静かな寝息を立てている早海を起こさないように、こっそりベッドから出ると近くに脱ぎ捨ててあった服を羽織り、リビングに移動することにした。

 適当なものを冷蔵庫から見繕い、リビングにあるローテーブルに並べて置く。
 ふかふかしたラグが敷いてあるし床暖房だから直に座っても温かくて、密閉率の高いマンションだから暖房をつけるとすぐに部屋はあったかくなる。
 前まで暮らしていた所に比べると数段上の暮らし。光稀さんは早海に毒されてるなんて言ってたけれど、そうなのかな……オレは変わってしまった?
 自分では気づかない変化を誰かに指摘されると、何故か不安になる。その変化を適応なんていうけど、果たしてそれが良い事なのかどうかわからない。もし、早海とお別れするようなことがあったら、オレはまた以前の自分に戻れるんだろうか……?
 口に食べ物を押し込んで、お茶で流し込む。
 複雑に入り混じった感情は、何一つはっきりしなくて心を曇らせるだけだ。
 シャワーを浴び、身体はすっきりとしても気持ちは晴れない。早海の隣に身体を滑り込ませると、無意識なのか彼の腕が巻き付いてくる。その温もりはとても優しくて、オレはその胸に縋り付いた。
 
 目を覚ますと寝室は明るくなっていて、カーテン越しにチラチラと見える白い光は夏に日差しほど強くないけれどやっぱり眩しくて目を擦る。

「おはよう、由宇」

 声のする方を見るとすっかり服を着替えて整えた早海さんがいて、どうやらオレが目を覚ますのを待ってくれていたようだ。

「ん……も、行くの?」

 身体を起こすオレに早海がキスをしてくる。
 彼を仰ぎ見てそれを受け止めながら尋ねる。最近は朝も早いから一緒にこの部屋を出ることは少ない。

「もうしばらくの辛抱だ」
「う……ん」

 彼がなるべくオレとの時間を優先してるなんて、そんなの分かってる。仕事なんだし、仕方ないんだから、あまり気にしなくてもいいのに……。
 そんな風に言われると甘えたくなってしまう。

「由宇、来週の連休は……空けていて欲しい」
「ん……でも、仕事があるんじゃ?」

 オレの言葉に早海は困ったように苦笑する。

「まぁ、似たようなものはあるけど。初めてのクリスマスだから……な」
「早海さん……」

 照れくさそうに言うのが嬉しくて。

「勿論、空けておきますね」

 自分から彼に抱きつくと、その唇に自分のを重ねた。


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