2012年10月 の記事一覧

新月の暗闇に紛れて 14

はじめに……

 意外な一面?
 隼人くんの嫌いなもの
 実はもう一つ出てきます

 わたしもどちらも苦手です ((( ;゚Д゚)))

 今回もちょっと軽めで書いてみました
 最近ちょっと重い内容だったから
 ちょうどいい息抜きになるかな?

 ではでは、続きをどうぞ (^_-)-☆
 



 昔からホラーなどの怖い話は苦手だ。その手の話には参加しないようにしてきたし、テレビや映画も見ないようにしていた。だから、俺のそう言う一面を知っているのは家族と一部の人間だけ。

「まさか、そう言うのが苦手とはな……」

 目の前で青木が楽しそうに言った。
 荷物を両手で抱え、俺は立つ瀬がない状態でその視線に晒されていた。

「1人の部屋だと怖いんなら……」
「だ、大丈夫だよ」

 どうせからかう気で満々なのはわかっている。
 精一杯強気に言ってみるものの、心細い気持ちはやはり隠しきれなくて声は若干震えていた。

「ふ、ん……まぁ、怖ければ無理しないでいいから。この部屋に来ればいい」

 青木が選んだ部屋は少し大きめの主寝室。広めのベッドが置かれていて1人で寝るには大きすぎるくらいだ。

「あ……りがと」

 ここは素直に礼を言っておく。自分でも自信がない。深夜に目が覚めてトイレに行けないような子どもではないにしても、不安は残っていて俯く。

「なんなら、一緒にトイレもついて行ってやるから安心しろ」
「それはっ……いいっ」

 顔を上げると青木のからかうような視線とぶつかる。絶対に遊ばれてる……そう確信するのに十分過ぎて、俺は立ち上がるとその部屋を出ることにした。

「絶対に甘えたりしないんだからっ」

 捨て台詞のように青木に向かってそう言い残すと、その部屋からほど近い部屋を開けて入る。
 電気を点けようと壁に手を伸ばし、スイッチを押すとパッと明るくなった。
 そこは書斎のようで、本棚に囲まれた小さな部屋になっていた。
 本は昔から好きだ。その世界に入り込んで時間を忘れることができる。
 しばらく、この部屋に居ようか……そう思ってふと壁を見ると、見てはいけないものと目が合った。手のひらくらいの大きさがある、足の多い生き物……。
 一瞬にして血の気が失せて声もなくその部屋から飛び出すと、再び青木のいる部屋に戻った。

「どうした?」

 舌の根も乾かぬ間に戻ってきた俺に青木は首をかしげる。

「俺も……この部屋に居させて欲しいな……って」
「何か、あったのか?」
「うっ……いや、あ……この部屋広いし、俺一人くらいいても良いでしょ?」

 これ以上弱みを握られるのはごめんだ。そう思って何とかはぐらかそうと試みる。
 青木のことは構わないようにしながら荷物を置いたその時、

「あ、そこ……」

 青木が突然言った。その言葉にビクッと身体を震わせて、青木を振り返り見る。

「またまた、怖がらせようとしないでよ」
「いや、本当にさっきまでそこに……」

 そう言われて怖気づいてしまう。何かがいた……? 何がいた?
 疑心暗鬼に捉われてその目の端に何かが映った気がして飛び上がる。パニックを起こしたようで気が付けば、傍にいた青木にしがみつく自分がいた。


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蜜月の隣で 真の最終話 R18

はじめる前に……

 えーっと、
 実は個人的なお祝いなのです

 この度、当サイト『晴れの日も雨の日も』の記事が

 祝・100本目

 を、迎えました!!

 ってなわけで、
 心残りだった、

 『蜜月の隣で』真の最終話 として

 100本目にしたいと思いますっ!!

 久しぶりにこの二人を書くと
 やっぱり一番しっくりくるなぁ……
 とか思っちゃいます

 もちろん、ほかのキャラクターも大好きですけれどねっ!

 おっと、少しばかり饒舌になっちゃいました (^_^;
 では、ご期待に添えるかしら???

 今回はR18にさせていただいてます
 年齢が満たない方や
 あまり得意でない方は
 ごめんなさい 




 部屋に鍵がかかると同時に抱きしめられる。
 早海の身体からは煙草の香りがして、それが不思議と嫌じゃないのは、きっと彼のことが好きだからだと思う。その匂いに包まれると自分でも抑えが利かなくなってしまうのを知ってる。

「由宇、どうする? このまま? それとも……」

 シャツの中に手が侵入し素肌にその指を這わせて、待つつもりなど全くないクセに、早海がそんな風に尋ねてくるのは、オレの意思を尊重してくれているから?
 それともそれを聞くことで、オレを煽ってるつもりなの?
 どちらにせよ……、答えは決まってるのに。

「……ん、このままがいい」

 駐車場で散々煽られて待てるはずがない。
 それに、早海の汗の香りも煙草の香りも、体臭すべてがまるで媚薬のようにオレを興奮させてるから、それを洗い流すなんて勿体なくて……。
 自分からしがみつくように抱きしめると、ほんの少し驚いた表情の彼を見上げる。

「どうか、した?」
「いや……、由宇から抱きついてくるって、今までになかった気がしたから」
「ん……? そうだっけ?」

 思い出そうとしてもそんなコトを気にしたこともなかったから全く記憶になくて、首を傾げるしかない。すると突然ふわりと身体が浮き上がり、早海に抱き上げられた。

「わっ……早海さっ!?」

 驚いて声を上げるオレを落とさないように、彼の両腕に力が入る。しっかりと抱きしめられると、早海に大事に思われているのがダイレクトに伝わってくるようで。すごく恥ずかしい気分になりながらそっとその首に腕を回して抱きしめた。

 寝室に入るとベッドに身体を下ろされる。ほんの少しだって離れたくなくて、首に回した腕を解かずにその上半身を引き寄せると、近づいてきた早海の唇にそっと自分のを合わせた。
 キスを交わしながら互いの服を脱がせあう。シャツのボタンやネクタイがもどかしくて上手く指が動かない。だけど早海は手馴れていて、手間取っている間にすっかりオレは一糸まとわぬ姿にされてしまった。

「ズルい……」

 そう呟いたオレを早海はクスリと笑って、宥めるようにキスをくれた。

「好きだよ……由宇」
「ん……オレも……早海さん」

 何度も何度も口づけを交わし、互いの気持ちを確かめあう。身体の昂ぶりを手で触れ、早海の熱い滾りを体内に受け入れると、幾度となく達するほどに穿たれる。
 このまま蕩けて、彼と融合することができたなら、それはこの上もなく幸せなのだろうか……?
 望んでも混ざり合う事のない身体は、何度重ね合わせようとももどかしいくらいやはり二人でしか無くて、でもだからこそ、この瞬間がとても愛おしくてたまらない。

「早海……さっ」

 頭が真っ白になって意識を手放す寸前、早海の首に腕を回し縋りついて抱きしめ、それに応じるように身体の奥深くへ彼の熱い飛沫が叩きつけられるのを感じた。

 長めの吐息と身体の上に重なってきた早海の体重。まだ繋がったままの身体は、ぎゅっと抱きしめられることで心は満たされて心地よさが倍増する。

「……こんな気持ち……良くわからないけど」
「う、ん……?」

 疲れた様子の早海は、目を閉じたままオレの言葉を聞いていて、オレは……。

「こんなのを、愛してるって……言うのかな?」

 心が命じるままにそれを言葉にしてみた。
 一瞬、早海の動きが止まったように思えて、そんな恥ずかしい言葉は言わない方が良かったと後悔したのも束の間。息が止まるほどに強く抱き締められた。

「由宇は……たまにすごいことを突然言うから」
「んっ……?」

 苦しくて早海の腕の中で喘ぐ。

「俺も由宇を愛してるよ」
「あっ……早海さっ……ま、た……?」

 身体の中で早海の分身が息を吹き返すようにまた存在感を増していく。

「当然、あんなことを言われて普通じゃいられないに決まってるだろう?」

 顔中にキスの雨が降り、それは全身を覆っていく。

「んっ……も、ダメっ」
「ダメじゃない」

 完全にオレの意見は無視されて、為す術もなく早海が起こす嵐に巻き込まれていく。

「俺だけを見て、もっと求めろ……俺もそうするから」
「んっ何、勝手な事っ」
「誰にも渡したくないからに決まってるだろ?」
「ひゃ、……あっ……ん」

 ゆっくりとその総身を出し入れされると、会話どころじゃなくなる。

「こんなに欲しいと思ったのはお前しかいないんだ、だから……」

 すごく真剣な早海が目の前にいて、その眼差しが切なくて目が離せなくなる。
 こんな顔をした早海を見ることなんて今までにない。珍しく、いや、初めてかも知れない余裕のない顔。それがオレに、……オレだけに向けられている。

「それを望むなら……オレは……早海さんだけのものだから」

 今言える、精一杯の言葉。
 誰かにこんなに切なくなるほど望まれたことなんて、今までに一度だってない。それが自分の好きな人ならなおさらの事。

「もっと……、欲しい……」

 その言葉の直後、身体を激しく突き動かされ、まるで獣のように身体を貪られる。
 早海が完全に自制心を失ったのを、オレはこの時初めて見た気がした。

 気が付くと早海の腕の中にいた。どうやら完全に気を失っていたようだ。少しでも動かすと身体の節々が悲鳴をあげる。それでもそれは愛され尽くした証で、心は穏やかで幸せに包まれている。

「すまない……無茶をして」

 早海が謝る理由がわからない。これはオレが望んだことでもあるのに。

「あ……」

 話そうとして、声が嗄れて出ないことに気付く。散々早海に喘がされ啼かされたから声がつぶれてしまったのだろう。
 すまなそうにしている早海に顔を寄せると軽く何度も口づける。
 オレができる気持ちの伝達はそれしか思いつかなかった。

「本当は俺からも伝えたいことがあったんだ、……由宇に」

 そう言うと、早海は言いにくそうに笑う。
 また一つ、今までに見たことがなかった早海の表情に出会った気がする。
 そんなことを思って見ていると、早海は一息呼吸を置いて、それから言った。

「一緒に暮らそう」

 短い簡単な言葉だった。

「一緒に……?」

 掠れた変な声でオレは尋ねた。早海はオレの顔を両手で包むようにはさむと愛おしげにキスをされる。

「返事は?」

 催促されて、オレは早海の目を見つめる。
 あと幾つ、早海はオレに見せたことのない表情をするんだろう? これから先もオレにだけ向けられるなら、ずっと見ていたい。

 声に出して返答する代わりに、オレは早海の唇に満面の笑みでキスを返す。早海はそれを受け止めて、それから嬉しそうに笑ってくれた。


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新月の暗闇に紛れて 15

はじめに……

 このサイトのトップページをちょっといじってみました
 今まで利用してくれてた方はいらっしゃるのかしら?
 目次のページを一番最初にくるようにしましたよ
 
 そうすると今度は
 最新記事がわかり辛いので
 それも書き足すことに……

 進化なのか後退なのかよくわかりませんが
 過去記事も探しやすくなったかな? と
 わずかな期待をしております

 更新と共にやることが多くなってますけれど
 頑張るのみっ!

 ではでは、物語の続きをどうぞっ ヽ(*^ω^*)ノ




 さっきまでは確かにベッドを隔てた向こう側に青木は居たはずだった。
 なのに今、俺はその胸にしがみついて顔を埋めている。
瞬時に我に返ると恥ずかしくてたまらなくなった。だから、身体を離そうとしたのに、何故かそれを青木に引き止められる。

「青木さ……ん」

仰ぎ見た俺の上に影が落ちて来た。
何が起こったのかわからない。ただ、唇に感じたのは柔らかい感触と温かな吐息。重なっていたのはほんの僅かな間なのに、長く感じられて……。
ゆっくり青木の身体が離れると急に体温が奪われて肌寒く感じた。

「……今」

自分の唇を指で触れる。ついさっきまでそこに感じたのは紛れもなく青木の……?

「キスは、初めてだったのか?」

しれっと言われる。俺は……というとあまりのショックに声も出なくて、うまく思考が働かない。

「こんな所にキスマークつけてるんだから、それはないか?」

 訳の分からないことを言って、指で自分の首筋を突くようにして俺に指し示す。シャツの襟で見えるか見えないかのそこは、そう言われてみれば朝起きた時から赤くなっていた事を思い出し、手のひらでその場所を覆って隠した。

「随分大胆な奴だよな?」

 困惑する俺をさも楽しげに言いながら詰め寄ってくる。じりじりと後ずさりする俺の足下にベッドの角が当たった。

「どんな奴?」
「な……に言ってるの、か……」

 『わからない』という言葉は言えなかった。青木の冷たい視線は真実を追求していて、曖昧な言葉は拒否されているように感じた。

「本当に……。朝起きた時にはもう……」
「ふ……ん」

 言い訳をしているような気分になる。何で、俺はこんなことを青木に話さなきゃならない……?

「朝までただ、直樹と一緒に寝てただけだし」

 それでも言わずに誤解されたままなのは俺にとっても不愉快で。

「直樹……?ああ、あの……」

 昨夜会ったばかりの俺の家族を、青木は覚えていていたようだ。

「あの敵意むき出しの弟クンね……」

 楽しげに青木は言うけれど、俺にはその覚えはない。いつ、そんな場面があったのかと記憶を遡ってみても思い当らなくて。

「敵意って、そんなのあった?」

 苦笑してそう言った俺に、青木は不思議そうな顔をした。

「気づかないのか? 随分お気楽だな。それとも慢性的な状況下で麻痺してるとか?」
「だから、これはただの虫刺されだし、直樹はそんなこと思ってない……と思う」

 強く言い切れないのは青木にそんな風に言われて自信が揺らぐからだ。確かに、直樹の俺に対する独占欲にも似た感情は普通じゃないかも知れない。第一、16歳にもなって兄と一緒に寝たいとか、他人と比べたことはないけれど、やっぱり……。

「明日、一度隼人の家に行くか? 着替えも必要だろう?」

 青木の意外な申し出に、俺は黙って頷いた。


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新月の暗闇に紛れて 16

はじめに……

 最近の隼人くん、
 ちょっと可愛くなってきました?

 気のせいかな?

 さてさて、
 それでは、続きをどうぞっ ヽ(≧▽≦)ノ




 その後、俺たちは幾つかの部屋を探索して、この屋敷とも呼べる建物内にある最低限暮らすのに必要な部屋を把握した。
寝室はさっきの部屋で決まりだし、玄関ホールからも程近い居間は日中を過ごす場所になりそうだ。お風呂とトイレ、最後に厨房と食堂。
所々リフォームはされていて、でもどこかしらアンティークな要素がチラホラ伺える。
例えばお風呂。猫足のバスタブなんて初めて見た。どうやって使うのか興味を示していると、青木が背後でニヤニヤしているのが見えた。

「何なら一緒に入るか?」
「え……遠慮しとく」

それでなくても俺にキスなんかしてきた青木だ。それに今までそんなこと考えたこともなかったけれど、同性だからと言って『何もない』とも限らない。
大体、弟との仲を今もまだ誤解しているみたいだし、首の赤いところもキスマークだと主張して譲らない。

そういえばすっかり忘れていたけれど、どうして青木は俺にキスなんかしたんだろう?
初めて触れた他人の唇は柔らかくて、ほんの少し冷たい感じがした。移動する彼の後ろを追いかけ、そんなことを思い出して赤面する。
 ファーストキスにコレといった思い入れなどないにしても、やはり初めては特別なものであって欲しかったのに、あろうことか男に奪われるなんて大誤算だ。

 初めて会った時、冷たい眼差しに威圧されて脅威を感じた。二度目にあった時は終始からかい口調で苦手意識を持った。その夜、青木の過去の話と彼の弟と俺が似ていると聞かされて少しだけ親近感がわいた。それから今日、初めてのキスを奪われて、しばらく一緒に暮らす事になった訳だけど……。どこか距離感を感じずにいられないのは、青木との年齢差だけではなくて、この人が持っている空気がそうさせないのではないかと思う。
 例えば、笑っているように見えてもその目までは笑ってなくて、どこかしら拒絶感を感じずにいられない。

 この人が変わる……?

 『ありえない』と思った。
 裕司は俺にならできるなんて言ったけれど、出来る気がしない。だけど、彼が変わらなければ俺も変わらないのだそうだ。

「無茶振り……だよ」

 裕司の言葉を思い出しながら、それを口に出して言ってしまっていたようで、

「何か言ったか?」

 振り返り青木が俺を見る。気づかずにその背中に向かってつんのめった俺を、青木が両手で捕まえるようにキャッチしてくれた。

「あ……、ごめん考え事、してた」
「気をつけろよ」

 謝罪した俺に軽く注意を促す青木を見上げる。

「ったく、お前は不注意というか、無防備というか……」

 そう言うと軽くため息をついた。まるで、俺には言っても仕方ないと諦めたような態度だった。

「そういうところが付け込まれる原因になってるって、いい加減に気づけ」
「なっ、……わけわかんない事言うなよ」

 気色ばんだ俺に『ほらほらその態度だ』と言わんばかりの青木の様子に、オレのボルテージは上がる。

「そういう素直なところが、『カワイイ』そうだ」
「な……」

 誰がそんなことを言ったのか、なんとなく想像がついた。
 青木とそういう会話が出来るのは、裕司くらいしかいない。
 自分より年下の裕司にまでそういう風に見られてたなんて、と思うと顔が真っ赤になってしまう。

「さて、夕食は何が作れるのか確認しないとな……。お前、手伝いくらいできるだろ?」

 俺を取り残し、青木は厨房へと向かいながら勝手なことを言って姿が見えなくなった。

 しばらく二人で暮らす……?

 からかわれてばかりの俺には、とても困難なことのように思えた。
 


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長月の戸惑い 11

はじめるまえに……

 少し短めになってしまいました
 もうちょっと本郷さんのターンが長くなる予定でしたが
 本郷さんってば、動きが悪くてっ(涙)
 頭も固いし、融通効かないし……

 ではでは、久しぶりの『長月の戸惑い』ですね

 続きをどうぞっヽ(*^ω^*)ノ




 あれは本気だ……。
 そうでないとわざわざ宣戦布告してくる意味がない。

 助手席のシートに身を預けながら逡巡する。わざわざ正木の口車に乗って騒ぎ立てる必要は感じないものの、あの自信たっぷりな態度は気に入らない。
 正木がどう門脇にアプローチし、それにどう門脇が応えおうとそれは本人同士の問題であって、本郷は門脇の意思を尊重すればいいだけだ……。
 そう考えて自分を落ち着かせ、出かける直前に見た門脇を思い出す。完全に本郷だけを選べない自分に、彼の気持ちは重く感じられる時もある。でも、もし彼が正木を選ぶというのなら……。

「……本郷?」

 隣で早海が声を掛けているのが聞こえ、ハッとした。どうやら完全に自分の世界に入り込んでいたようだ。

「悪い、聞いてなかった。何だ?」

 気を取り直して尋ねる。

「お前がぼんやりしてるのなんか久しぶりだったから。何かあったのか?」
「ん……いや、気に留めることもない。些細なことだ」

 そう……些細なこと。自分に言い聞かせ、手元の手帳を確認する。もし、門脇があいつを選んだなら、自分はほんの少し前に戻るだけのこと……そう思えば良い話だ。
 なのにどこかしっくりとしないのは、少しは門脇に対して情が移っているからだろう。

「さっきお前を拾う前に誰かと話をしていただろう? それが関係しているのか?」
「……ああ、でもそれはプライベートな問題だ。早海には関係がない」
「まったく……友達がいのない奴だな」

 苦笑するようにそう言う早海に、本郷はそっけなく返事を返し、手帳を覗き込む。

「早海、これから行く取引先なんだが……」

 個人的な話は打ち切って仕事の話を始めれば、本郷の頭は完全にそちらのモードに切り替わる。長年の付き合いから本郷が自身の私的なことを話すことは皆無に等しいことを知っている。だからそんな意図を察して、早海がそれ以上聞かないことを本郷は利用する。
 それが早海と本郷のいい距離感を保っていられる秘訣のような気がしていた。着かず離れず、本郷が望んだ通りの関係。そしてそれは、いまさら変化しようのないものであるのもわかっている。心の中で解決しない何かがモヤモヤする理由がはっきりとわからなくて、気持ちの整理がつかないのは確かな事だった。


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