2013年01月 の記事一覧

闇に月は融けて 35


はじめるまえに……

 あけましておめでとうございます
 
 今年最初の更新記事ですw
 朝のヒトコマ……
 正木に厳しい久市さん
 だけどホントは大好きなんですよっw
 素直じゃないだけデス

 今年も昨年同様、
 いえいえ、それ以上に
 可愛がっていただけると嬉しいです
 今年もよろしくお願いいたします!!

 では、続きをどうぞっ (≧▽≦)ゞ


 

 ほんの僅かな時間、目を閉じていたくらいにしか思っていなかったのに、次に目を開けた時には明るい朝の光がカーテンの隙間から差し込んで、電子音が時計から聞こえた。
 手を伸ばし、アラームを止める。何時に眠れたのかわからないけれど、恐らく2時間程度だろう。最後に時計を見た記憶から推察する。
 自分の隣でアラーム音にも屈することなく眠り続ける正木を見て、ベッドから降りると浴室へと向かう。
 体内に残る彼の残滓を洗い流し、さっぱりとした所で朝食の準備に取り掛かる。
 まずはコーヒーメーカーをセットして、それから卵を熱したフライパンへ割り落とす。
 買い置きしている食パンをオーブンに入れて、テーブルには冷蔵庫からバターを出しておく。自分にとってはいつもの朝食準備。だけど、何か違うのはそれが二人分あるということだけ。
 フライパンの上でいい感じに半熟になった目玉焼きを確認して火を止める。皿を取り出し、そこにオーブンから出したパンと目玉焼きを乗せて、カップにコーヒーを注ぐとリビングに運んだ。

「正木……?」

 寝室の扉を開け、声を掛けるけれど起きる気配はない。
 仕方なく近づいて、頭まですっぽりと被った布団を勢いよく捲る。

「うっ……わ……」

 正木にしてみれば突然の出来事。
 布団を剥がされて冷たい空気に晒されて、素っ頓狂な声を上げて目を白黒させている。

「……おはよう、正木。……朝ごはん出来てるから。……それと、何か着ろ」

 目の前にいる素っ裸の男。目のやり場がなくて困る。

「ひ、久市さん!?」

 正木の非難の目を浴びながら、くるっと身体を翻してリビングに戻る。
 がさがさと大慌てで追いかけてくるのを感じて、振り向こうとするとそのまま背後から抱きしめられる。

「もっと、優しく起こしてくれないですか?」

「優しく?」

 腰に回された腕が下腹で交差して、背中にピッタリと張り付いている正木を感じる。

「……例えば?」

 正木が望む優しく起こす方法。大体予想はつくけれど、尋ねてみる。

「王子様のキスで目覚めるとか、あるでしょう?」

「それは……」

 白雪姫だろ……。言葉は背後の正木の唇に吸い取られる。正木を振り返るようにして身体を捩じり、自分からキスをもっとと強請って見せるともう一度重ねられる。

「もっとも、姫は久市さんですけど……」

「だ、れが……姫だっ」

 満足そうな正木に毒吐いて、ゆっくり離れる。
 大体、正木をキスで起こすとか恥ずかしすぎるし、その後どうなるか予想がつく。

「真っ赤になって、そういう所が素直で、可愛いんです」

「も、……ばか。言ってないで早くごはんにしよう」

 俯いて、朝食の準備が整ったテーブルの前に座る。  
 さっきまで焼きたてだったパンは少し冷たくなっていて、逆にバターは柔らかくていつもよりも塗りやすくなっていた。



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闇に月は融けて 36


はじめるまえに……

 せっかくの休みでも
 年始のご挨拶とか
 予定はぎっしり……
 思ったように時間が取れず
 更新もままなりません orz

 出来る限り、頑張ります!

 お話の方は、
 若干後半に不穏な動きアリ?

 ではでは、続きをどうぞっ (≧▽≦)ゞ




 一緒に家を出て、同じ駅へと向かう。
 今までに何度も繰り返してきた行動なのに、正木がいるだけで少し違う。 
 隣にいる正木を意識する。
 これから始まるかも知れない日常生活に新たな色彩が足されたような、新鮮な感覚。

「寒いですねぇ」

 首をすくめ、身を縮ませた正木の吐息が白くなって見えた。

「12月だからな」

 当たり前のことしか言えないオレに、正木は苦笑して見せた。

「そうだ……」

 突然、何かを思い出すように言うから、一体何事なのかと思って次の言葉を待つ。

「仕事が一区切り付いたらクリスマスですね」

 何を言い出すのかと思えばそんな事か。
 楽しそうに言う正木に比べて、オレはそのイベントにあまり関心が持てない。

「しばらくはお互いに忙しいですけど、その頃には目途もついているでしょうし……、一緒に過ごせそうですね」

「そう、だな」

 確かにその頃には年末調整やら何やらが片付いているはずだ。例年のことを思い出しながら返答する。

「温泉とか、久市さんの浴衣姿も見てみたいし……どこか行きますか?」

「え……?」

「もちろん部屋湯がイイですね。いつでも入れるし、気兼ねもないですからね」

「ちょっと、……別に一緒に過ごすなんて」

「ちゃんと探しておきますから、任せてくれますよね?」

 勝手に話は進んで、否応なく強引に決定され、オレの意見はお構いなしだ。それなのに、正木の無邪気そうな笑顔一つで、何一つ異議を出せなくなる。

「じゃあ、決まりってことで。久市さんの希望は何かありますか?」

「……正木に任せる」

 結局、何を言ったところで彼の好きなようにしかならないから早々に諦める。でも、それが嫌なわけじゃない。正木が楽しそうに話して、計画を立てているのを見ているだけで、それだけでも幸せに感じる。だからどんなに強引でも許せてしまう。
 つくづく、正木に甘くなったという自覚はあるけれど、これっていわゆる『骨抜きにされている』とかいう状態なんだろうか……。

「先の楽しみが出来たら、張り合いが出てきました」

「それは良かった」

 嬉々としている正木にオレは若干気圧される。彼が思う理想のクリスマスを想像するだけで、なんだか疲れを感じるからだ。

「必ず、連休は空けておいてくださいね、俺だけのために」

 それは誰かを意識した発言で、じっとオレを見つめ念を押すように言うから言葉に重みが増している。

「……約束、するよ」

 正木にしてみればその日だけは誰にも譲れない『特別』なんだろう。
 自分にはそれほどのものを感じないけれど、でもそれを望むなら叶えてあげたいから。

「連休は空けておく」

 何の保証も出来ないけれど、正木を見つめ返し伝えた。



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闇に月は融けて 37


はじめるまえに……

 新年の3日目にしてこの暗い展開
 避けて通りたかったけれど
 コレは避けられないので

 そうそう
 過去記事への拍手、
 たくさんいただきましてありがとうございます
 とても嬉しいです~~~♪
 自信作とか、胸を張って言える出来栄えではありませんが
 それでも読んでいただけるのは本当にありがたくってw
 言わずにはいられませんでしたッ!!

 ではでは、続きをどうぞっ (≧▽≦)ゞ
 



 午前中の仕事が一段落する頃、高林部長から呼び出しの電話を受けた。ある程度予想していたことだけに覚悟はしていた。けれど、いざこの時を迎えると決めたはずの心が揺れる。
 その扉の前に立ち、手を握り直すとノックした。
 中から声がして深呼吸をしてからドアノブを回す。今までにも何度も訪れた見慣れた室内。その奥に配置された机の向こうに高林の姿がある。
 入室してすぐにその視線が自分に注がれているのを感じる。

「ご用件をお伺いします」

 事務的に声を掛けると、高林は苦笑して見せた。

「相変わらず、真面目だな」

「……仕事中、ですから」

 突き放すように言って彼との距離を保つ。そうすることで今までの自分とは異なることを彼に示そうと試みた。

「あの時も君はそうやって事務的に振る舞ってた」

 高林が近づいてくる。
 懐かしそうに語りながら、オレに愛人契約を迫った時と同じように。

「遥」

 名前を呼ばれて、その手がオレに向けて伸びてくる。

「俺がここへ呼んだ理由をわかっているんだろう?」

 彼の指先がオレの頬に触れて、確認するように輪郭をなぞる。
 それをやんわりと手の甲で押し返して拒絶すると、高林を軽く見上げた。

「……そういうことか」

 何も言わなくても察してくれると思っていた。
 昨日、彼も見たはずだ。オレが正木と一緒に居る現場を。この呼び出しはそれの確認がしたかったに違いないんだ。

「本気になったのか? あの正木に?」

「だとしたら、どうだというんです?」

 挑むようなオレの言葉に、彼の眼光が鋭く光る。
 まるで不誠実なオレを責めるかのような厳しさを感じて、呑み込まれそうになる。

「大体、オレに本命が出来たら別れてくれる約束だったはずです」

 無言になった高林に気圧されそうになりながら、何とか踏みとどまる。

「本気だというのか? 流されてそうなったんだろう? 俺の時と同じに……」

「そんなコト……」

「1年以上付き合ってきたからわかる。君が誰かに本気になるはずがない。今までそうだっただろう?」

 まるでオレの過去を見て知っているかのような言葉に、耳を塞ぎたくなる。
 確かに、今までずっと流され続けてきた。自分が思うほど貞操観念が高くないことも知っている。正木とのことも流されて関係を持ったことは認めざるを得ない。
 けれど、自分が正木を想う気持ちは偽りではなくて本当のものだから。だから、自分の想いを貫く。

「……別れて欲しいんです」

「妻の事なら心配ない、単なる偶然だ」

「そうじゃなくて……」

「一時の迷いなんだろう?」

 オレの言う事などまるで聞こうともしていなくて、自分の意見を押し付けようとする態度に頭を振る。

「別れてください」

 きっぱりと高林に宣言した。



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闇に月は融けて 38


はじめるまえに……

 ついに高林部長が動きます
 というか、
 話に動きアリ!?

 どうする久市さんっ??

 ではでは、本日2回目の更新です
 続きをどうぞっ (≧▽≦)ゞ




 決意は変わらない。
 高林とのことはいずれ終わるべき関係で、リスクも高い。
 いくら1年以上続いていても、彼の立場もオレの立ち位置も変わることはない。そんな事は、彼自身わかっているはずの事なのに、どうしてなのかそれらを受け入れてくれる兆しが見えなくて。
 しばらく互いの思惑を探るように見つめあったまま動くことも出来ない。

「わかった」

 苦渋の言葉をため息とともに出したのは彼の方だった。
 ようやくの返答がやけにあっさりしていて、なんだか意表を突かれた気になる。

「本当に……?」

 にわかに信じられないから確かめる。
 付き合ってきた時間が長い分、彼がこんなに簡単に身を引いてくれる事に違和感を感じた。

「ああ、久市が望むんだから仕方がない」

「……」

 なんだか妙に引っかかる言葉だ。それは彼の言葉の端々からも感じられる。

「今ならまだ、取り消してあげてもいい」

 追い打ちをかけるように、高林は追加して言った。
 彼から漂うのは圧倒的な優越的な立場からくる自信で、今までのやり取りが終わったわけではないことを意味していた。

「どういう、意味ですか?」

 何か嫌な予感がした。
 彼のその態度が、あまりにも高圧的だから、正体のわからない不安が押し寄せてくる。

「営業が今抱えている最大のプロジェクト……」

 意味ありげに話し出す。
 今、営業が取り組んでいる仕事がずいぶん難しい案件だというのは、耳にしたことがある。詳しいことはわからなくても、大きな取引だからその成功いかんによっては会社全体の評価も大きく変わってくるだろう。それくらいのプロジェクトなのだ。

「知っているだろうが、担当は正木のいるチームでね」

 意味深なその言葉に、隠れた意図を知る。
 正木の仕事を妨害し、立場を利用して彼をプロジェクトから外すつもりだ。

「賢明な君には、わかるだろう?」

「そんな……」

「もちろん、彼がこの仕事から外れるとなるとイメージは悪くなるだろうから、このプロジェクト自体どうなるか……」

 そんな話を持ち出して脅しをかけてくるとは思いもしなかった。
 上司という立場を利用したパワハラ……。

「そこまでする必要……ないでしょう?」

 たかだかオレ一人のために、正木だけではなく会社を巻き込むなんて。
 非難を浴びせても、高林の態度に変化は見られない。
 彼はやると言ったら行動する人だ。だから、この話は例え話なんかではなく、本気。
 一体どうして、何が気に入らないというんだろう。
 高林を見上げ、先のない関係をそこまでして続けようとする彼を眺める。

「わかっていないね、……遥は」

 不敵に笑う高林がオレに向けて手を伸ばしてくる。
 振り払う事も出来ず、手のひらがオレの頬を捉えるのを感じる。

「奪われるのは、俺の主義じゃない」

 傲慢で、卑劣な男。
 本能的には全身で拒絶を示しているのに、それを押し留められる。
 悔しいけれど、自分がどのようにするべきなのかわかっていた。不本意とか、そういうのじゃない。抗いようのない絶対的な服従を強要されて、従うしか選択肢はなかった。




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闇に月は融けて 39


はじめるまえに……

 久市さんが不幸に……
 うちのはハピエン指向のはずですが、
 今回はかなり『どんより』してます

 うーん、ごめんよぉー

 今日から仕事始めですね
 なんか休みの間の更新が思ったほどできなくて
 ご期待にそえず申し訳なかったです m(_ _)m 

 では、続きをどうぞっ (≧▽≦)ゞ




 頭では理解できていても心はまだ迷いがあって、何か良い解決策がないかを考えるけれど、そのどれもが袋小路で詰まってしまう。
 出来る限り冷静さを保つようにしながらつけ入る隙をうかがうけれど、余裕さえ見せつける彼に弱点らしいものは見られなくて、精神だけがすり減ってくる。

「気持ちを整理する時間をあげよう」

 譲歩を見せたのは高林の方だった。
 これ以上話をしても無意味だと判断したのだろう。どうせ、彼の思惑通りになることは明白なのだ。

「とは言っても、あまり正木に君を触れさせたくはない。こう見えても人並みに嫉妬心は持っているんだよ。だから……」

 思案するように時計に視線を送る。

「今日中に答えを聞かせてくれ。いつも通りの方法で」

「横暴……過ぎます。そんな要求、オレが呑むと思ってるんですか?」

 ぎゅっと手を握りしめて、高林に鎌をかける。少しくらい動揺するかと思っていた。けれどそれは高林の表情に一切現れることはなくて、逆に苦笑を誘う程度だ。

「逃げる、か? 君は自分が会社に損害を与えるかもしれない存在だという事をわかっていて、そんな事はできないヒトだ」

「そんな事をしても貴方の履歴にだってキズが付くでしょう?」

「その時は、遥と心中してあげるよ」

 優位を保ったまま高林が冗談めかして言う。 
 一矢報いることも出来ない。オレの性格も把握した上での脅しなんだ。
 身体が冷たくなっていくのがわかる。まるで蛇に睨まれたカエルのようだ。
 時間をあげるなんて詭弁だ。本当は、正木と別れる為の時間であり、オレが諦めて彼の手に堕ちるまでのカウントダウン。

「部屋を用意して待ってるよ、遥」

 要求している内容の酷さとは裏腹に、優しいキスがオレの唇に重ねられる。
 彼の事は嫌いじゃなかった。正木と出会わなければ、高林とは引き離されるまでずっと続いたかもしれない。手放しで解放されるとは思っていなかったけれど、こんな結末は予想にもしていなくて。
 どうして彼がこんなにまでオレに執着するのか、その理由が見当たらないのは、原因が別にあるからなのだろうか。
 ゆっくりと唇が離れて、解放される。

「部長……」

 オレの声は彼には届いていないようだった。 

 それからどのようにして自分の部署に戻ったのか記憶は定かではないけれど、ただ機械的に午後からの仕事をこなしていた。
 気が付けば定時を過ぎて、残っているのはわずか数名。仕事を終わらせて、エレベーターホールへ向かう。そこに人影を見つけて目を凝らす。

「正木……」

 部屋から出てきたオレを待っていたのか、正木がそこにいた。
 優しく微笑みかけてくれる姿に、縋り付きたくなる。彼は何も知らなくて、そんな彼を守りたいと思える。

「久市さん、帰りましょうか?」

 一緒に帰りたいと思った。差し出された手を取って、温かい部屋で彼の腕に抱かれていたい。

「ごめん……」

 その腕を見つめ、謝る。

「一緒には、帰れない……」

「久、……市さん?」

 誰もいない静かなホールに、正木の声が響いた。



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