2013年07月 の記事一覧

再スタートのお知らせ


お久しぶりです、みなさま。
約1ヶ月ぶりでしょうか?
時間が過ぎるのは早いですね。
何をしていたわけでもないのに、
漫然と今に至ってしまいました。

さてさて。
うちのサイトも、
立ち上げてから明日で

なんと、一周年になります!

自分の想像以上に
沢山の人がきて下さって、
まさしく興奮の日々でした。
思えば最初の頃は、
ただただガムシャラで、
書くのが楽しくて。
作品の良し悪しはともかく
脇目も振らず頑張ってたな……
などと懐古してみたりしてw

そんなこともあって、
せっかくの一周年だし、
これを機に再スタートしようと考えてます。
もし良かったら、
また覗きにきてやってください(^人^)
では、
明日午前7時頃。
『それは恋ですか?』の続きでお会いしましょう。

かすみ 拝



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それは恋ですか? 72

 身体を軽く揺すられたのを感じて浅い眠りから意識が浮上する。起きなきゃいけないのはわかっているのに心地よさを手放したくなくて、自分を目覚めさせようとする手から逃げるように寝返りを打つと、まだ開けてもいない目蓋に力を入れてさらにぎゅっと目を閉じた。

「ありす」

 しばらくすると今度は名前を呼ばれた。けれどもう少しこのままでいたくて、オレは未練がましく夢の世界にしがみつく。
 しぶとく抵抗を続けていると、ガサリと布の擦れる音とベッドが軋むのが聞こえた。身体のすぐ近くでマットレスがほんの少し沈む。
 一体何が起こるのだろうと様子をうかがっていると、身体の上を誰かが覆い被さっているように感じた。

「んっ、……なに」

 圧迫感に不安を感じて目を開ける。最初に飛び込んできたのは宇佐木の顔で、それは瞬時に目が合うほどの近距離で、息を飲んで言葉を失う。

「起きた……か」

 ひどく残念そうな声音から、彼が何をするつもりだったのか容易に想像がつく。
 宇佐木はまったく動じることもなく、それどころか笑って誤魔化そうとでもするような態度でオレのことを見ていた。

「……近い、よ。宇佐木」

 ムッとしながら宇佐木の頬に片手を当てて、グィッと身体が離れるように押し返した。
 まったく、油断も隙もあったもんじゃない。
 身体をベッドの上に起こすと、何故か胸の下辺りまで捲れ上がっているシャツの裾を、空いているもう片方の手で下ろす。宇佐木との距離を安全圏にまで保つと、牽制するように睨み付けた。

「我慢するって言っていたのはどこの誰だっけ? まさか忘れたなんて言わないよね」

 それにあの時、寮の壁は薄いからとも言ってなかったっけ?
 なのにその舌の根も乾かぬ間に……。
 オレの怒りを感じるのか、宇佐木は困ったように笑っている。

「そんなコト言ったって、目の前にそんなおいしそうなものがあったら……なぁ」

 一切悪びれることもなく、その上視線でオレの身体を上から下までなぞるように見る。舌舐めずりまでしそうな様子に恥ずかしくなって、耐えかねてオレは近くにあったタオルケットを手繰り寄せると全身を覆い隠した。

「かわいいな、ありすは」

 宇佐木はふっと笑い、まっすぐ手を伸ばしてくるとオレの前髪を掻き上げた。目が合わないように逸らしていても、まじまじと顔を覗きこまれているのを強く感じる。
 今までなら『かわいい』なんて言われても不愉快でしかなかったのに、どうしてなのだろう。宇佐木にそんなことを言われて見つめられるとドキドキしてしまって、どう対処していいのかわからなくなる。
 固まっていると勝手に身体の奥が熱くなってきて、背中からはじんわりと汗が滲んだ。
 自分はこんななのに相変わらず宇佐木は余裕そうに見えて、1人で焦っているのがいたたまれなくなる。

「帰る」

 一言だけそう告げ、ベッドから降りようと足を床へ向けた。足が着地する寸前、背後から伸びてきた腕に姿勢が崩されて、バランスを失ったオレは宇佐木の胸に倒れこむ。

「えっ、ちょっ……」

 驚いて仰ぎ見ると、それを待っていたようにすかさず唇を覆われていた。
 柔らかくて温かい感触に、目を閉じるのも忘れて受け止めている自分に気付く。

「なにすっ」

 我に返って宇佐木から離れると、息巻いて苦情を口にする。すると宇佐木がオレの唇に自身の人差し指を押し当てて、それだけで続く言葉を止められてしまった。

「おはようのキスは恋人の基本だろ?」

 さも当然と言わんばかりの宇佐木の口ぶりに、反撃の言葉は何ひとつとして浮かばず。急速に自分が真っ赤になっていくのを自覚させられる。

 遊ばれて……る?

 ニヤニヤしている宇佐木を見て、そんな考えに辿り着く。オレのことをからかって、どんな反応をするか楽しんでいるに違いない。
 急ぎ足でドアに向かったオレの背中に、『また後でなっ』って声が掛かる。振り返ると上機嫌の宇佐木がベッドの上からオレを見送っていて、片手をひらひらと振っていた。

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それは恋ですか? 73

 眠い目を擦りながら食堂へと向かう。
 頭は重いし身体も怠い。きっと寝不足が原因なんだろう。眠れたのは宇佐木の部屋にいた時だけで、自分の部屋に戻ってからは一睡もできなかった。
 なのに今になって眠気がやってくるなんて、タイミングが悪すぎる。
 アクビが出そうになるのをかみ殺していると、堪え切れなかった涙で視界が滲んだ。

「おはよ、ありすちゃん」

「祐樹。……おはよう」

 いつもと変わらない時間に、満面の笑みを浮かべた祐樹がオレの前に現れた。でもその笑顔がなんだかとても不自然に感じられるのは……気のせい?

「ずいぶん眠そうだねぇ」

 皮肉たっぷりな祐樹の言い方に、ギクリと背中に震えが走った。
 それでなくても情報通で、しかも勘の鋭い祐樹だからこそ、その言葉に隠されたモノを感じる。

「夕食にも顔を見せなかったクセに。どうしてそんな事になってるわけ?」

 チクチクと目に見えない針で刺されてるんじゃないかって思うほど耳が痛い。
 どうしよう。とにかく謝って、それだけで済むかな?
 先に食堂へと入って行く彼の後ろを追いかけ、なんとか機嫌を直してもらえるように取り繕う。それでもまったく収まりがつかないようで、祐樹の意地悪は続く。

「大体さぁ。昨日の夜、あんなに連絡したのに。無視するってどうよ?」

 言われてようやく思い出した。
 宇佐木に呼び出されて、そちらにばかり気を取られていたけど。祐樹からも何度も連絡があったんだっけ。すっかり忘れてた。そりゃあ祐樹が怒るのも無理はない。

「本当にごめん、祐樹。悪かったって思ってる」

 両手を合わせ、拝むようにして祐樹に謝る。そぅっと様子を窺うと、まだふくれっ面をした祐樹が居て。迷うように視線を彷徨わせていた。

「本当に、悪かったって思ってる?」

「もちろん、本気でそう思ってるよ」

 確認するように尋ねられて、オレは何度も首を縦に振りながら答えた。

「……じゃぁさ、昨日の夜。何があったのか話してくれる?」

 そう切り出した祐樹は、見事なくらい満面の笑みだった。オレが断れなくなるように、今までの不機嫌はただの演技で。もしかして、最初っから祐樹の目的はそれを聞き出すことだったんじゃないかな……?

「友達だもん、教えてくれるよね? それくらい」

 押しの強いその言葉に圧倒されて、オレはまるで人形のようにぎこちなく頷いた。

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月明かりに堕ちる 27

『絶対に温室には来ちゃいけないよ』

 綺麗な顔を哀しげに歪ませて、懐かしい人は言った。
 どうしてそんな表情で言うのだろう……。子どもながらに疑問に感じていたけれど、言いつけを守ってその場所に近づくことはなかった。
 でもあの日、中庭に消えたっきりの父をどうしても探し出したくて。そして禁断の場所に踏み込んだ。

 むせ返るような甘い香りがして、そこには誰か見知らぬ人達が父と一緒にいた。
 温室の中央に置かれた噴水の近くには白いベンチ。その上には衣服を身に着けていない父が、上半身を投げ出すようにして仰向きになっている。白くて滑らかな肌が薄紅色に上気し、忙しく上下する胸に色づく赤い突起は尖り、吸われ、指で弄られて、唾液にまみれ淫らに色を濃くしている。両脚は大きく割り開くように抱えられ、その奥の窄まりには男の肉棒を深々と突き立てられ、咥えこまされていた。男が出入りを激しくすると肌がぶつかる音がして、前後に身体が大きく揺らされる。父の脚の間でそそり立つ欲望は、また別の男の手によって弄ばれ、その先端からは透明な蜜が溢れている。切なげに喘ぎを漏らす濡れた唇からは、はしたなく唾液が零れ伝い、男の赤黒い肉塊を含まされると、濡れた音を立ててその訪れを待っていたかのように自ら舌を絡めた。そんな父を囲みその身体を貪っている男たちの合間から、欲情に濡れた赤い目がこちらに向けられ、視線が合う。
 父は一瞬悲しげな眼をして、そしてすべてをシャットアウトするように、硬く目蓋が閉じられた。

「とう……さま……」

 手を伸ばし、呼び掛けるのに自分の声はそこへ届かない。
 叫んで、……そんな自分の声で目が覚めた。

 辺りはまだ暗く、太陽すら昇ってはいない。
 寒々しい部屋は静まり返って冷たく沈んだ影を落とし、隣に感じる三谷の体温だけが温かく感じられた。
 上半身をベッドに起こすと、素肌をシーツが滑り落ちる。
 やけにリアルな、到底夢とは思えないモノだった。
 あれは、……記憶?
 奥深くに埋められ、完全に忘れ去られていたはずの、父親のもう一つの姿……。
 あの甘い香りを嗅いだことをきっかけにして、思い出したくないのにどんどん記憶が引きずり出されていく。

 最近の三谷は自分だけではなく、父親のことさえ詰るようになってきた。
 それは裕司が記憶を取り戻しつつあることを確認するかのようで、この頃では言い返す言葉もなくなってしまっていた。
 その度に三谷が裕司の父親に対し、尋常でない気持ちを抱いていたことを思い知らされるようで、それがたまらなく裕司を辛くさせた。
 冷たい朝の訪れを知らせる空気が、露わになった肌から温もりを奪い、裕司は身体を震わせる。もう、これ以上眠る気にはなれなくて、ベッドから足を降ろす。
 床の冷たさに一瞬足を竦ませて、意を決すると爪先だけで立ち上がる。
 側にあった衣服に袖を通すと、眠っているらしい三谷を起こさないように部屋を出た。

 1階にあるサンルーム。そこは父親との温かい思い出に満たされていて、気持ちが安らぐ唯一の場所になっていた。
 父が昔そうしていたように、ネコ足の椅子にゆったりと腰かけて、ぼんやりと霞のかかる庭を眺める。
 日の出が近いのかわずかに空が白み始めて、木々の彩が目にもはっきりとしてくる。
 寒さを感じて、両足を胸の前で抱えるように椅子の上に座ると、背中を丸めて小さくなった。そうすると少しだけ温かく感じることができる。

「裕司さん……」

 背後から声が掛かり、振り返るよりも早く身体にひざ掛けが掛けられた。
 ふわりと体を纏ったそれからは、三谷の香りがして。

「そんな恰好では、風邪をひきますよ」

 たまに感じられるそんな三谷の優しさが、昔と変わらないように感じられて。涙が出そうになるのを堪える。
 もう、昔の関係には戻れない。解りきったことなのに、それを望んでいる自分を感じてしまうから。だから、優しくなどされたくはないのに、こんな風に不意打ちをされると許してしまう。

「いいから、……あっちへ行ってて」

 本当は抱きしめてもらいたいのに、口から放たれる言葉は三谷を拒絶してて遠ざけようとする。唇を噛んで、三谷の行動を待つ。その足元に縋りつきたい自身を押さえ込みながら、気づいてほしいと胸の中で叫び、心のどこかで愛されたいと切望する……。

「……好きにしろ」

 けれど、しばらくして得られた答えは、想像していた通りのものだった。
 男が離れていく気配を背中に感じながら、絶望に近い孤独感を覚えた。
 無条件に自分を愛してくれる存在は、もうこの世にはどこにもいないのだ。
 裕司は唯一温かさをくれるひざ掛けを握りしめ、そしてそれを放棄するように床の上へ投げ捨てた。





 久々ですが、今日はこちらのお話を更新してみました
 このお話もちゃんと進めたいなぁ……
 
 

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それは恋ですか? 74

 トレイをテーブルに置き、着席すると同時に祐樹が好奇心を抑えきれないといった様子で『それで?』と尋ねてきた。だから期待に満ちたその質問に答える。宇佐木の告白に応じたこと、それから朝まで一緒にいたことも。
 初めから、祐樹には宇佐木とのことを話すつもりでいたんだけど、自発的にそうするのと強要されたのとでは心境が微妙に違う。それでも結果的には打ち明けることが出来たのは良かった気がした。

「そっか……よかったね。ありすちゃん」

 聞き終わった祐樹は驚くわけでもなく、穏やかな口調で祝福してくれた。まるでこうなることがわかってたかのようで、オレの方が戸惑う。

「驚かないのか?」

「うーん、一番近くで2人を見てたから、いつかはこうなるんだろうなって思ってた」

 そうなんだ? というか、祐樹にはそんな風に見られてたってことか……。
 そう思うと急に恥ずかしくなってきて、顔が熱くなる。

「ま、驚いたと言えば……」

 最後の一口を食べ切って、祐樹は軽く手を胸の前で合わせると、オレの方を見て楽しそうにクスっと笑った。

「まさか宇佐木があの時計塔でなんてね。意外すぎ」

 時計塔?
 いわくありげな祐樹の口振りからするとそこに意味があるんだろうけど、さっぱりオレには見当もつかない。

「なに? 時計塔って場所に意味でもあるの?」

「あぁ。やっぱり知らない……よね。ありすちゃんは」

 どういうことなのか、説明してもらおうとした時。祐樹の視線がオレの後ろに注がれたのが分かった。

「どうせなら、宇佐木自身に教えて貰えばいいんじゃない?」

 オレの背後に向けて祐樹はからかうような口調で言う。視線につられるようにして振り向くと宇佐木がいた。どうやらちょうどここへ来たばかりみたいだ。

「宇佐……」

「いったい何の話をしてるんだ?」

 オレにはまったく目もくれず、宇佐木はまっすぐに祐樹を見て尋ねた。その声が祐樹を牽制するようで、不満たっぷりに聞こえる。
 どうしたんだろう。話のネタにされたのが嫌だったのかな?

「もー、怖いんだから。そんな態度じゃいずれありすちゃんに愛想つかされちゃうよ?」

 宇佐木の威嚇に怖気づくこともなく、祐樹はしれっと軽口をたたく。そして自分のトレイを持つと予告もなく立ち上がった。

「ありすちゃんもまだ食事が残ってるみたいだし、邪魔者っぽいから僕は先に行くね」

「ちょっ、祐樹?」

 引き止めようとしたけど早々と離れていってしまう。祐樹の指摘通り自分の食事が途中のままでは追いかけることも出来なくて、オレは宇佐木とそこに残された。
 そうしてはたと気づく。
 祐樹はさもオレに気遣うようなフリをして、本当の目的は宇佐木から逃げ出すことだったんだ。

「それで、……俺に何を聞きたいんだ?」

 ぼうっとしているオレに、今度は抑揚のない宇佐木の声が掛かった。
 宇佐木の表情は一見優しげなのに、その目は全然笑っていない。薄ら寒い気配がして、背中をゾクリと冷たいものが走った。

 こんな状態で何が聞けるっていうんだよ……?

 宇佐木のターゲットはオレに変わったみたいだ。
 祐樹のように逃げだせるわけもなく、降りかかってきた火の粉を散々浴びながら、オレは誤魔化すように笑った。 





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