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誤解から生まれた真実 1

 その日のオレは憂鬱だった。
 待ち合わせをしていた場所にたどり着いた時には30分の遅刻。それからさらに遅れて入ったキャンセルの連絡が追い打ちをかけた。
 約束していた相手とはいつもそんな感じだ。お互い自由だしタイプも同じ。気に入ったのがいたらそれで解散。 後腐れもないし二人でいることでメリットもある。だけど、さすがに土壇場っていうのは気分が悪いってものだ。

 怒ったところで仕方がない……と携帯をポケットに滑らせると、気分も新たに馴染みの店に向かうことにした。 そこは駅からほど近い場所にあり、1人でも入ることのできる所で、ちょっとした料理なら食べることもできる。見た目は普通。だけどオレのようなのが行くとすぐにわかる独特な空気というのがある。
 あまり広い店ではない、5~6人が座れる程度のカウンターと小さなテーブル席が2つ。一目で客層と面子がわかるようなシステム。
 最初に気に入らなければ話しかけることも話しかけられることもない。それがここの一番いいところだった。

 店の扉を開けるとまだ時間が早いのか先客は2人だけ。どちらもが受入れ対象外だ。
通り抜けて一番奥の席に移動しカウンターの席に座った。

「今日はおひとりですか?」

 すでに馴染みになってしまった店の主人とはそんな会話で始まる。
 名残惜しそうな視線を感じつつ完全にそれを無視するのも快感だ。

「お腹がすいてるから何か作ってよ」

 わざと聞こえるような声で可能性を否定してやる。これからゆっくりご飯を食べようとしてる奴が乗ってくるわけないだろってことだ。

 適当に料理と酒を見繕い注文する。これで少しは時間が稼げる。
 これから始まる長い夜をどんな相手と過ごすか…。できれば後腐れのないさっぱりしたドライな関係が築けるタイプがいい。顔は……もちろん好みのがいればそれに越したことはない。そんなことを考えているとカランと店の扉が開いた。

 無意識に入ってきた客を確認する。身長も体格も申し分ない。自分の好みに照らし合わせながら評価する。結構好みな感じだ。だけど、なんだか違和感がする。たぶんこいつ、ノンケなんだ。
 無防備に視線を浴びながらなぜか近づいてくる男の姿を、オレはどうすることもできず目で追いかけていた。

 一つ席を開けて隣にそいつは座った。
 どうやらカンは正しいようで、普通に仕事帰りにこの店に寄っただけ……のようだ。
 運ばれてきた料理をつつきながらオレはなんてツイていないんだろうと人知れず溜息をついた。


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