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誤解から生まれた真実 3

「お兄さん、ちょっと、それはない」

 余裕の表情で驚く椋介に言った。

「なんだ、お前」

「だって、店で暴力は良くないでしょ。俺も巻き込まれるわけだし」

 ぎゅっと握りあげるように男は椋介の腕を掴んでいるようだ。体格ではほぼ互角なのに、立ち位置が有利なのかそれとも何かやっているのかわからないがその体はびくとも動かない。

「この人も嫌がってるみたいだし、俺から見てもお兄さん脈なさそうだよ?」

 振りかざした腕を自分の背中に回されて、どうやっているのかわからないがそれが苦痛を与えているようで、椋介の顔が苦悶にゆがむ。
 口では文句を言いながらも、さすがに敵わないと思ったのか椋介はされるがままその男にたやすく店から連れ出していく。

「光稀、おぼえてろよ」

 椋介の姿が店から見えなくなる寸前、捨て台詞のように言い残す。そんな光景をオレは呆然と見送っていた。
 信じられないことにオレを救ってくれたのは偶然隣に座ってたノンケの男だった。

「すみませんお騒がせして」

 戻ってくるなり男は店主に頭を下げた。
 出来すぎなくらい人のいい男なのか?
 オレは急にそいつに興味と更なる好感を持った。
 騒ぎを起こしたとして、男はこの店を去るようだ。それに気が付いてオレはその後を追いかけた。

「すまない。助けてもらったのに」

「え?ああ、別にいいですよ。ちょうど迷惑してたし……」

 店を出てすぐのところで捕まえた。
 わかりきったことだが、オレを見ようとしないそいつに提案を持ちかける。

「もし時間があるなら奢らせてもらえないか?お礼がしたい」

「ああー。でも俺そっちの趣味ないんで」

 困ったように言った。やっぱりそうだったか。オレのカンは正しかったわけだ。

「気づいてた。そういうのは無しでどう?」

 オレは仲間内でも評判のいい笑顔を見せてそう誘った。

「じゃあ、そう言う事で……」

 戸惑ったように照れながらも彼は乗ってきてくれた。

「オレ、沢良宜 光稀(さわらぎ みつき)」

「高野 将人(たかの まさと)」

 自己紹介するとなんだかおかしかった。
 別に日頃行っている仕事場での会話と変わらないことなのに、どちらも少し緊張していて。

「いい店知ってるんだ。行こう」

 自然と笑いがこみあげてくるのは久しぶりだった。
 気持ちよく高野を店に案内しながら、オレの憂鬱はいつの間にか吹っ飛んでいた。
 それから、店に入ってからしばらくはぎこちなかった会話も、お酒が入ってくることで少しずつ打ち解けてくる。それにしても、高野は酒が強い。一緒になってしばらく付き合っていたオレは先に酔いが回っていた。

「沢良宜さん、大丈夫なんですか?」

 心配げに高野が声をかけてくる。

「ん、だいじょうぶ」

 高野の声は耳触りが良くて心地よかった。どうやら、こいつの声もオレの好みなのだ。
 どうしよう……。自分でも気づいていた。わかっていて誘った。でも……ダメ元で言ってみたい。それが何かを壊すことになっても……。

「こんなこと、男に言うの初めてなんですけど」

 おずおずと高野から言い出した。

「俺、沢良宜さんならいいかな」

 突然の申告にオレの方が息をのんだ。そう、願ったりかなったりで……。

「別に……オレはいいけど?」

 素直に承諾してみる。

「そう……なんですか?」

 やけに高野は真剣な表情だった。それを見てオレはわからなくなる。
 酔いに任せて言っているだけなのか、それとも本気か……?

「からかったりしてません?」

「ないない」

 緊張しているのなら、その緊張をほぐせばいい。境界線を感じているのなら見えないようにするだけだ。そして勢いに任せているのなら、それを煽ってやる。

「なんなら、今から……どう?」

 大胆にオレから誘った。高野の喉がゆっくり上下するのが手に取るようにわかった。
 大体どんな奴でもそうだ。その気がないなんて見せかけて、本当は興味があったりする。そしてそれをオレは見逃したりしない。


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