「それで、昨日は何があったんだよ?」
ぼんやり自分の席から窓の外を眺めていると、北川がやって来て説明を求められた。昨日の新宮の様子を見れば、誰だって心配する。それは当然のことに思えた。
「……おい、小野瀬。聞いてんのかよ」
答えないでいると苛立ったような北川の声に、オレは彼を見上げる。
ちゃんと説明されるまではこの場所から離れないぞ、という固い意思を見せる顔つきに、不本意ながらも話さざるを得ない気がした。
「オレも。よくわからないんだ。ただ、探しに行ったら新宮が年上っぽい男3人に絡まれてて……すごく怯えてた」
「はぁ? そりゃ、ビビるだろうけど……あそこまではならないだろ? 一体何があったんだよ?」
「わかんねぇ」
別にあの時新宮は危害を加えられてる様子じゃなかった。見た目にも殴られた様子はなかったし、掴みかかられてたわけでもない。あいつらの1人が言ってた通り、何もされていなかった。それなのに、新宮は彼らに恐怖してたんだ。
「わからないって……なんだよ、それ。新宮は? あいつは何も言わないのか?」
北川の言葉にオレは頷く。
理由を知りたいのはオレの方だ。
新宮とあの3人の間に、以前どんなことがあったって言うんだ……?
「……んだよ、当てにならない奴だな。それで? どうなんだよ新宮の様子は?」
「わかんねぇ」
「はぁぁぁ?」
お前に期待してたのにと大きなため息を吐き、北川は明らかにがっかりした顔で新たに尋ねてきた。けれど、それに対する答えも満足にできないオレに、彼は素っ頓狂な声で不満そうな声を上げる。
「ちゃんと送れって俺言ったよな? そんなことも満足にできないのかよっ?」
「そのつもりだったけど、新宮が……」
「俺は、あんな状態の新宮を1人にさせるなってつもりで言ったんだぞ? 分かってたはずだよな?」
声を荒立てて、北川はオレの言い訳がましい言葉を遮る。
その大きな声に、一瞬教室がしんと静まり返った。オレたちが言い合っているのを遠巻きに注目している。
「そんなこと、お前に言われなくてもそうするつもりだった」
1人にさせるつもりはなかった。それなのに、不注意な自分の質問で新宮はオレの前から逃げ出してしまった。
そのことを、オレは後悔してた。
彼の後を追いかけて自宅まで行ってみたけれど、彼の自転車はそこにはなくて。それからしばらく待ってみたけれど新宮は帰って来なかった。
今朝だってギリギリまで登校してくるのを待ったけれど、結局姿を見てもいない。
「多分……オレが悪いんだ」
ポツリと言ったオレに、北川は何も答えてくれなかった。
教室のざわめきはいつしか戻っていて。北川はちっと軽く舌打ちをすると、自分の席に戻って行った。
その日新宮が学校を休んだというのをオレが知ったのは、お昼休みになってからで。授業が終わると一目散にオレは新宮の家に向かった。
彼の自転車があるのを確認すると、オレは彼の部屋の前に立ち、続けざまにチャイムを数回鳴らす。
「新宮、居るんだろ? 新宮っ」
ノックをしながら叫んだ。古いアパートだから、そうすれば周りにもオレが来ていることが知れ渡る。無視したくてもできないはずだと踏んでいた。
なんとなく、それくらいしないと出てきてもらえないような気がした。
ドアの前に人の気配がして、ドアが開く。オレの前に迷惑そうな顔をした新宮が現れた。
「……近所迷惑だから、止めてくれない? そういうの」
「悪い。けど、そうでもしないと会ってくれないんじゃないかって思ったんだ」
正直に言うと視線を逸らされる。その態度を見て、きっと図星だったんだと思った。
「……なにか用?」
いつもなら部屋の中に入れてくれるのに、玄関までしか入れてもらえない。昨日のオレの無神経な言葉をまだ怒ってるのだろうか。
「今日、学校を休んだって聞いたから……心配で。大丈夫か?」
まだ昨日のショックから立ち直れていないのだろうか?
彼の顔はやけに白くて、すごく疲れているように見えた。
「……小野瀬が心配するほどの事はないよ」
そう口では言ってても、自分の二の腕を掴んでいる手がぎゅっと握りこんで、しかも視線を合わせようともしない。口先だけの言葉がオレを拒絶していて、悲しくなる。
「そうか? あの後すぐに追いかけたんだけど。お前早いから見失っちゃって。ここまで来たけどまだ帰ってなかったし、どうしたのかなって」
「……そうなんだ」
「なにか、……あったのか?」
恐る恐る尋ねてみる。
新宮は表情を硬くしてギュッと口元を引き締めると、視線を彷徨わせた。
「ああ……。あの後前のバイト先から電話があって。ちょっと来て欲しいって言われたから立ち寄ってたんだよ」
「……そう、なのか?」
「ああ。しばらくかかったから。すぐには帰れなくて……さ」
本当なんだろうか?
オレは新宮の言葉を疑っていた。1人で立つのもやっとなくらい青ざめてフラフラな状態だったのに、元のバイト先からの要請だったとしても、そこに行けるとは思えなくて。
真意を確かめるように見つめるけれど、ここへ来た時から新宮はオレとは目を合わせたくないのか避けてばかりだ。
「僕の言う事、信じられない?」
「……いや。……信じる、よ」
困ったように笑って見せるから、その作ったような笑顔があまりに痛々しくて。オレは真実がどうだったとしても、新宮の言葉を受け入れることにした。
よかったと言う新宮は、どこか悲しそうで。とても辛そうに見えた。
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ハルさま〜\(^o^)/
お越しいただきありがとうございます。
今回のメインは
小野瀬と新宮ですね
北川はともかく、
ほかのキャラは今後登場するかどうか…(^^;;
12歳のキャラがいるのですかっ??
さすがに若すぎます…
たぶん自分じゃ、
キャラとして扱いきれないんじゃないかな。
あと、
40代以上の大人な男性も、
書きたいけど年相応な話し方かとか、
自分が大人になりきれてないから?
キャラ設定に自信が持てなくなってます
でもまた、MLにも挑戦したいですねぇ。
コメントありがとうございました。
かすみさま、こんにちは!
そうなんですか、村は今、メンテナンスなんですね。
私は村にもFC2にもなんにも入ってないので
関係無いですけどやってきました!
小野瀬くん、新宮くん、北川、桃園くん・‥
バスケだからいっぱい登場人物がいて覚えるの大変だけど
主役は‥小野瀬くんと新宮くん?
北川くんは新宮くん→ラブ?
まだまだ始まったばかりだから分りませんよね。
でも若いって素晴らしい!
うさぎさんとありすちゃんの時も若くていいなぁって思ってたけど
うちはオジサンばかり(笑)
でも一番若い子は12歳がいます(^_^;)
でもあっちゃんが看板なので‥仕方ないですね。
こちらの登場人物にいくつのカップルができるのかな?
楽しみですっ(^v^)
ではまたm(__)m