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誤解から生まれた真実 5

 日付が変わって、まだ太陽も昇らないような時間にふと目が覚める。
 どうやら少し眠ってしまったらしい。
 ご丁寧に体にはシーツが掛けられていて、隣には眠り込んでいる高野の姿があった。こっそり抜け出すと音が出ないよう注意を払いながら服を着て、そして部屋を出た。

 一度体を重ねれば自分の気が済むだろうと思っていた。だけど実際はどうだ?あのまま朝を迎えてシラフになった高野を見たくはないと思った。もともと高野はノーマルの人間だ。そしてそれをこちら側に引き込んだ。一時の気の迷い、朝を迎えればそう思う事だろう。それでいい。自分のいた世界に戻るのが高野にはお似合いのはずだから。何とも言えない気持ちをうまく表現しようもなくもやがかかったような閉塞感を感じた。こんなの…早く忘れるべきだ。そう自分に言い聞かせた。

 それから流れるように時間は過ぎ、また週末がやってくる。
 いつもの待ち合わせをする場所に立ち、オレは携帯を眺めていた。
 あの日、あんなことになる前まではオレからまた連絡をする予定だった。また飲みにでも行こうなんて話をしていたし、連絡先の書いた番号ももらっていた。それを登録するはずだった。そう、「だった」だ。今更蒸し返したくはないだろうと、そのメモをオレは捨ててしまった。
 もしかして、後悔しているんだろうか。

「光稀」

 物思いにふけっているとどこからか聞き覚えのある声がした。
 とても耳触りが良くて、心地の良い声質……。

「やっぱり、光稀だ」

 すぐそこに高野の姿があった。その表情には何の後悔もなくてオレの方が動揺を隠せないでいる。

「高野……」

 久しぶりと言えばいいのだろうか、それともあれからどうしてた?とか。どちらも違う気がして言葉に詰まって高野の顔がまともに見られない。

「どうして、ここに?」

 選びに選んで口をついて出た言葉がそれだ。

「光稀に会えるんじゃないかって」

 偶然ってやつなのか。何気にそんなものに感謝しながら、ふうん……と気のない返事を返す。

「今回は、俺に付き合ってもらえないですか?」

 その言葉の真意を見極めようと、オレは高野を見た。まっすぐな視線にぶつかって、やはりどうしようもなく胸が騒いで見返すことができない。
 オレの戸惑いを知ってか知らずか、高野に腕をひかれる。断ることも出来たのに、為す術もなく付き合わされる羽目になった。

 やっぱりこいつ強い……。
 酒を飲むにはまだ少し早い時間。にもかかわらず休み前だからか、意外に席は埋まっていて待っている人までいるような状態だ。そんな中、オレは高野の酒の強さに舌を巻いていた。
 それでも、前回よりはセーブしていた方だと思う。それでも飲むピッチはやや高野ペースに引きずられて早かったのかもしれない。
 後悔し始めているオレに対して高野はまだ普通の表情で、そういうのも小憎らしい。

「光稀は……酔うと途端に色っぽくなる」

 それまで全く触れても来なかった話題。一瞬耳を疑うような高野のセリフに、理解ができないでいた。

「そんなふうに言われたこと……ないですか?」

「……そんなこと言うヤツもいたかもな」

 過去の記憶を思い出しながら言うオレに差し伸べられた手が頬に触れた。
 イヤではない。むしろ心地よくて、初めて会って会話した時からそれは変わらず、そんな思いが形にならない。

「……ってくださいよ」

 酔っているからか頭がぼんやりしていて全く言葉がわからない。
 今、なんて……言ったのだろう。

「光稀?」

「え……あ、何?」

「だから、俺と……次も会ってもらえますか?」

 さっきとは言葉が少し違ったような気がしたけど、どうでもいい。
 こいつは……高野はどんな関係を望んでいるのだろう……?
 探りを入れたいのに、いい言葉がこんな時には思い浮かばない。ただ、頭の中で次も会うという言葉が巡っていて、せいぜい小さな声で「次も?」と尋ねるのが精いっぱいだ。

「次も、その次も俺とだけ」

 まるで子供に言い聞かせるように高野が言った。
 それがまるで契約を交わすようで、くすっと笑ってしまう。

「じゃぁ、高野とだけ」

 契約は成立。それだけで気持ちが収まる気がした。
 もともと、定位置に居座り続けるなんて気持ちはなかったのだからこれでいい。
 それ以上を求められても応えられるかなんてわからないし、オレには軽い付き合いが好ましかった。
 だけど、これからどんなことが始まるのだろう…?
 そんなことを考えるだけで少し胸が高鳴るのだった。


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