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誤解から生まれた真実 8

「光稀は……そう思っていたのか」

「え、な……に?」

「だから、付き合ってないって」

「だったら何?って……え?」

 言葉を聞き返す。
 それに対して男は盛大にため息をついた。

「やっぱり……気づいてなかったのか」

 さっぱり話が急展開しすぎで理解できてない。

「何回か、一緒に暮らそうとか言ってたんだけど?」

「え?だってそんな話、1度もしたことない」

 会えばすぐにアレだし、終わればすぐに寝てしまって……。
 いくら記憶をたどってもそんな話……。

「覚えてない?」

 男の手が懲りずにオレの頭に触れる。その触り方が気に入っていた。
 初めて会った時もなんとなくこいつが醸し出す雰囲気が好きだと思った。
 本当は年下のくせに見た目から年上だと思ってたこととか、そんなことを思い出す。

「……じゃあ、俺から付き合って欲しいって言ったことも?」

「覚えて……ない」

 呆然と答えてから、改めてそんなことがあったか?と思い出そうとする。

「だって、お前、いつも朝になったら居なくなってるし」

「いつも1度自分の部屋に帰ってましたからね」

「連絡先だって……」

「俺のは最初に渡したでしょ?」

「あ……」

 言葉が続かない。あんなもの捨てちゃってもうないんだけど。
 じゃあ、今までの関係をお互い勘違いしてて……?

「俺の告白も初対面の時だったんですけど?」

 言われてかすかに思い出した。
 ほろ酔い気分のオレにこいつが言った言葉。だけどオレはと言えば、その日その時を満たしてくれる相手を探していて……。
 なんてことだろう、オレってすごく酷い奴じゃないか。

「どおりであの後連絡もなければ、簡単にさせてくれていたわけだ」

 なんだか妙に納得しながら男が言った。そのあからさまな言葉に体が熱くなる。

「で、誤解が解けたところで…、今夜も泊めてもらってもいいんですか?」

 こいつ……確信犯か?
 オレが頷くのも待たず、また手をひかれる。

「この先の駐車場に車止めてるんですよ」

 年下の恋人はそんなことを言いながらなぜか楽しそうにしている。

「楽しみだな、光稀に何をしてもらうか考えておかなきゃ」

 その言葉の意味するところがわかって、顔が真っ赤に染まるのを感じながら、もうどうにでもなれと心の中に思った。
 今までの誤解が完全に払拭された今ならどんなことでもやってやる。
 数時間後にはそんなことを思った自分を死ぬほど後悔する羽目になるとは、その時のオレには知る由もないことだった。


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